魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
「私にはこれからお姉様がどんな行動をとろうとしているか、事前に読みとることができます。どんなことをしてでも、私がお姉様を止めます。自分でできないなら、他の人にお願いします」

「……一体なにを言っているの? あんたのお願いを聞いてくれる人間なんて、この家には一人もいないのよ? お父様も、使用人たちも、みーんなあんたのことが嫌いなの! 顔も見たくないの! 味方になってくれる人間なんて一人もいない! あんたはこの世に必要ない人間なのよ!」

「そんなことは……」


 ない、と言えないのが悲しい。オティリエの瞳に涙がたまる。


「ほらね、言い返せないでしょう? 自分でもよくわかっているんじゃない? 生きている意味も価値もない――それがあなたという人間。これから先もずっと同じ。一生変わることはないのよ」


 イアマがグイッとオティリエの身体を強く押し飛ばす。本棚に背中を強く打ち付け、オティリエは床にうずくまった。


(痛い……息が上手くできない)


 身体が軋む。ようやく痛みが落ち着いてきたと思った矢先に、イアマから髪の毛を引っ張られた。


< 55 / 330 >

この作品をシェア

pagetop