魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
【なによそれ! 殿下は本気でオティリエのことを好ましく思っていらっしゃるってわけ!? このわたくしじゃなく!? そんなの絶対ありえない!】
魅了の能力者であるイアマはこれまで、自分に対して好意を抱かない男性は存在しなかった。ましてや、己の目の前で別の誰かが褒められ、優しい言葉をかけられるのだってはじめての経験だ。婚約者のいる男性をたぶらかし、彼らの結婚をぶち壊すことで獲得してきた優越感が一気にしぼんでいく。悔しさのあまりイアマは己の手のひらをギュッと握りしめた。
【っていうかオティリエを迎えに来たってどういうことよ! まさかこの子を妃にとか考えているの!? 冗談でしょう!?】
(たしかに……)
イアマの心の声を聞きながら、オティリエも密かに同意をする。
さすがに昨夜、ほんの少し言葉を交わしただけで『妃にしよう』ということにはならないだろう。けれど、それならなぜ、彼がオティリエを迎えに来たのかもわからない。こたえを求めて、オティリエはヴァーリックをそっと見上げた。
「……それに、一晩経って『もしかしたらオティリエが家族からひどい目に合わされているんじゃないか』と思い至ったものだからね。やはり早く来て正解だった」
「まあ、そうでしたの。取り越し苦労をさせてしまって申し訳ない限りですわ」
間髪を入れずにイアマが否定をする。あくまで彼女がオティリエに暴力を振るったことをなかったことにしたいらしい。ヴァーリックは呆れたように笑い、ため息をついた。
魅了の能力者であるイアマはこれまで、自分に対して好意を抱かない男性は存在しなかった。ましてや、己の目の前で別の誰かが褒められ、優しい言葉をかけられるのだってはじめての経験だ。婚約者のいる男性をたぶらかし、彼らの結婚をぶち壊すことで獲得してきた優越感が一気にしぼんでいく。悔しさのあまりイアマは己の手のひらをギュッと握りしめた。
【っていうかオティリエを迎えに来たってどういうことよ! まさかこの子を妃にとか考えているの!? 冗談でしょう!?】
(たしかに……)
イアマの心の声を聞きながら、オティリエも密かに同意をする。
さすがに昨夜、ほんの少し言葉を交わしただけで『妃にしよう』ということにはならないだろう。けれど、それならなぜ、彼がオティリエを迎えに来たのかもわからない。こたえを求めて、オティリエはヴァーリックをそっと見上げた。
「……それに、一晩経って『もしかしたらオティリエが家族からひどい目に合わされているんじゃないか』と思い至ったものだからね。やはり早く来て正解だった」
「まあ、そうでしたの。取り越し苦労をさせてしまって申し訳ない限りですわ」
間髪を入れずにイアマが否定をする。あくまで彼女がオティリエに暴力を振るったことをなかったことにしたいらしい。ヴァーリックは呆れたように笑い、ため息をついた。