魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
「けれど、オティリエを迎えに来ただなんて、一体なんのために?」

「それはイアマ嬢に教えてあげる必要はないかな。君には関係のない話だし、一刻も早くオティリエ嬢をこの家から連れ出したいからね。あとで父親にでも聞くといいよ」


 ヴァーリックはイアマに向かって冷たい視線を投げかける。


【なっ……! なによそれ! わたくしには関係ないですって!?】


 内心カチンときつつ、イアマはヴァーリックに詰め寄った。


「まあ! わたくしはこの子の姉ですもの。妹がどこかに連れて行かれそうになっているのに、なにも知らないままでは心配ですわ」

「そう? 僕にはとてもそんなふうには見えなかったけどね。先ほどオティリエ嬢に向かってなんて叫んでいたのか、もう忘れちゃったのかな?」


 ヴァーリックが微笑む。イアマはクッと歯噛みをしつつ首を横に振った。


「記憶にございませんわねぇ」

「あくまでしらをきるつもりか……まあ、そうだろうね。君と話していても埒が明かない。この件については後日、侯爵を王宮に呼んで事情を聞くつもりだよ」


 なかったことにするつもりはない――言外にそう伝えつつ、ヴァーリックはオティリエに「行こう」と声をかける。


「待ってください、殿下! ……そうですわ! せっかくいらっしゃったのですし、お茶でもいかが? 我が家のシェフに美味しいお茶菓子を用意させますわ」


 イアマがヴァーリックにすがりつく。それから彼女はニヤリと口角を上げた。


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