魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
【そうよ! これは神様がわたくしに与えてくださった、またとないチャンスだわ。昨夜は失敗してしまったけど、今なら殿下を魅了できるかもしれない。……いいえ、絶対に魅了してやるわ!】
(お姉様が殿下を……!)
オティリエはイアマの心の声を聞きながら、ヴァーリックの裾を必死に引っ張る。
いくらヴァーリックが他人の能力を防げるからといって油断は禁物だ。しかも、イアマはヴァーリックを魅了しようと昨夜よりも躍起になっている。万が一ヴァーリックの能力が負けたら――。
【大丈夫だよ、わかっているから】
ヴァーリックは声を出さずに返事をすると、まっすぐにイアマの瞳を覗き込んだ。
「お茶は結構だよ。先ほども言ったとおり、すぐに屋敷を発ちたいんだ」
「そんなに急がなくてもいいじゃありませんか! わたくし、もっと殿下にわたくしのことを知っていただきたいんです。だって、わたくしほど聡明で見た目もいい令嬢なんて、この国にはいませんもの。あなたの妃にぴったりでしょう?」
何度もまばたきを繰り返してヴァーリックを見つめながら、イアマは焦燥を募らせていく。
【おかしい! やっぱり殿下には魅了が効いていない! どうして!? わたくしの能力が効かない人間なんてこれまで存在しなかった! そもそも、能力なんて使わなくても、みんなわたくしに魅了されていたというのに!】
(本当に、殿下にはお姉様の能力がまったく効いていないんだわ……)
密かに感動しつつ、オティリエがヴァーリックをそっと見上げる。彼はオティリエの頭を撫で、そっと目を細めた。
(お姉様が殿下を……!)
オティリエはイアマの心の声を聞きながら、ヴァーリックの裾を必死に引っ張る。
いくらヴァーリックが他人の能力を防げるからといって油断は禁物だ。しかも、イアマはヴァーリックを魅了しようと昨夜よりも躍起になっている。万が一ヴァーリックの能力が負けたら――。
【大丈夫だよ、わかっているから】
ヴァーリックは声を出さずに返事をすると、まっすぐにイアマの瞳を覗き込んだ。
「お茶は結構だよ。先ほども言ったとおり、すぐに屋敷を発ちたいんだ」
「そんなに急がなくてもいいじゃありませんか! わたくし、もっと殿下にわたくしのことを知っていただきたいんです。だって、わたくしほど聡明で見た目もいい令嬢なんて、この国にはいませんもの。あなたの妃にぴったりでしょう?」
何度もまばたきを繰り返してヴァーリックを見つめながら、イアマは焦燥を募らせていく。
【おかしい! やっぱり殿下には魅了が効いていない! どうして!? わたくしの能力が効かない人間なんてこれまで存在しなかった! そもそも、能力なんて使わなくても、みんなわたくしに魅了されていたというのに!】
(本当に、殿下にはお姉様の能力がまったく効いていないんだわ……)
密かに感動しつつ、オティリエがヴァーリックをそっと見上げる。彼はオティリエの頭を撫で、そっと目を細めた。