魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
「悪いけど、僕は君を聡明とは思わないし、なんの魅力も感じない」

「なっ……! このわたくしに『魅力』がないですって!?」


 イアマのこめかみに筋が立つ。それは魅了の能力を持って生まれたイアマにとって、この世で一番屈辱的な言葉だった。


「よくも……よくもそんなことを!」

「この際だから言っておくけど、どれだけ能力を使っても無駄だよ。僕が君に惹かれることはない。妃候補にすらなれないから、そのつもりで」


 ヴァーリックはイアマの怒りを受け流しつつ、案内役の侍女のほうを向いた。


「そういうわけだから君、今すぐオティリエ嬢の荷物をまとめてくれるかい? もうここには戻らないから、そのつもりで」

「えっ? ……しょ、承知しました。けれど、オティリエ様に荷物と呼べるようなものは……っ!」

「余計なことを言うんじゃないの」


 イアマが侍女の脇を小突く。侍女は困惑しながら口をつぐみ、ヴァーリックの視線を避けるようにしてうつむいた。


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