魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
「大丈夫、他の補佐官もみんなそうしているから問題ないよ。というより、一人だけ違う呼び方だったら浮いてしまうだろう?」

「それはそう、ですね」

「僕も今後はオティリエと呼ばせてもらうし。ね?」


 ヴァーリックはどこか期待に満ちた瞳でオティリエを見つめている。呼ぶまで次の話題に移れそうにない。


「……ヴァーリック様」

「うん」


 彼はそう言ってとても嬉しそうに笑う。ただそれだけのことなのに、オティリエの胸がドキドキと高鳴った。


「城に着くまでのあいだに、これからのことを少し話しておいてもいい?」

「はい。あの、でも……」


 オティリエがチラリと視線を落とす。彼女の手は今もヴァーリックに握られたままだ。


「ん?」


 ヴァーリックはほんの少しだけ首を傾げ、オティリエに向かって微笑みかける。


【嫌かな?】


 それから彼はあえて口で言わず、心のなかでオティリエに向かってそう問いかけた。


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