魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
「オティリエ、エアニーは無表情でとっつきづらそうなタイプにみえるけど、根はとても優しいやつなんだよ。今日オティリエを迎えに行くにあたっていろんな準備を整えてくれたのは彼だしね」

「あ……そうなんですね。いろいろとお手数をおかけしてすみません」

「いいえ。仕事ですから当然のことです。それに、あなたにはこれからヴァーリック様のために馬車馬のように働いていただきますから」

「ば、馬車馬ですか」


 オティリエの表情が少しだけ引きつる。ヴァーリックはクスクス笑いながら首を横に振った。


「大丈夫。エアニーは少し大げさなやつなんだ。ただ、僕の公務が忙しいのは事実。だからこそ、補佐官を増やしてエアニーの負担を少しでも軽減してやりたかったんだよ」

「そうなんですね」


 返事をしつつ、オティリエはニコリと微笑んだ。


(忙しいのに補佐官の負担まで考えてくださるなんて、ヴァーリック様はやっぱり優し……)
【ああ、ヴァーリック様……なんてお優しい方なんだ】


 そのとき、なにやら嬉しそうな声が聞こえてきて、オティリエは思わず目を丸くする。


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