魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
「えっと……彼女には具体的にどんなことを任せればよいのでしょう?」


 正直、なにをお願いすればいいのかよくわからない。オティリエが尋ねると、エアニーが「そうですね」と思案する。


「たとえば、これから仕立て屋がこの部屋に来るので、ドレスを見立ててもらってはいかがでしょう? カランはセンスがいいとヴァーリック様がおっしゃっていましたから」

「そうなんですね」


 そういえば先ほどドレスのことを話していたな、と思い出す。ヴァーリックの隣に立つのにみっともない格好はさせられないとも。


(たしかに、私は流行にもうといし、どんなドレスを選べばいいかわからないから)


 手助けをしてもらえるなら心強い。オティリエはチラリとカランを見た。


「それに着替えや化粧、食事やお茶の準備など、カランに頼めることはいくらでもあります。……いいですか、オティリエさん。ヴァーリック様の下で働くということは、あなた自身が人を使い、動かすということなんです」

「人を使い、動かす……」


 そんなこと、考えたことがなかった。もちろん、ヴァーリックから実家を連れ出されたのはつい先ほどのことだから、まだ仕事をしている自分について想像が追いついていないのは仕方がない。それでも、自分の認識が甘かったことを痛感してしまう。


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