魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
「ええ。あの方はあなたのような愛らしい女性を好みますから、変に背伸びをした服装じゃなくてよかったです」


 エアニーがサラリとそう言ってのける。しかし、オティリエの動揺は加速していくばかりだ。


(ヴァーリック様は愛らしい女性が好み……)


 いや、だからなんだというのだろう? オティリエはブンブン首を横に振り、考えるのをやめようと試みる。けれど、どう足掻いても、思い浮かぶのはヴァーリックのことばかりだ。


「あの……エアニーさんと一番はじめにお会いしたとき、私を見て『ヴァーリック様らしい』って心のなかでおっしゃってましたよね?」


 他に話題が思いつかず、オティリエは思い切って質問を投げかける。


「……ええ。たしかにそんなことを思いましたね」

「あれはどういう意味なんですか?」

「ヴァーリック様はついつい守ってあげたくなるような可愛いものが大好きなんです。子猫とか子犬とか小鳥とか。どうやら庇護欲を掻き立てられるらしく。おかげで城内ではあの方の保護した動物たちが何匹も飼育されているんです。ですからあなたを見て『ヴァーリック様らしい』と思いました」

「な……なるほど。そうだったんですね」


 ヴァーリックは元々面倒見の良いタイプなのだろう。だからこそ、オティリエのことも放っておけなかったのだ。ありがたい……そう思うと同時に、オティリエの胸がツキンと痛む。


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