魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
(どうして? なんでそんなふうに思うんだろう?)
オティリエはエアニーにバレぬよう、少しだけ首を傾げた。
「ここから先が執務用スペース――行政塔です」
エアニーが言う。使用人たちの塔とはガラリと印象が変わり、空気がピンと張り詰めているように感じられた。オティリエが姿勢を正すと、エアニーが少しだけ瞳を細める。次いで【いい心がけです】と心の声が聞こえてきた。
ヴァーリックの執務室はそこからさらに奥まったところにあるとのことで、オティリエはエアニーとともに歩を進める。
「規定上の始業時間は朝九時です。あなたの部屋からヴァーリック様の執務室までかなり距離がありますので、遅刻しないようにいらっしゃってください」
「わかりました。あの、ヴァーリック様は何時に執務室にいらっしゃるんですか?」
「……いい質問です。ヴァーリック様は十五分前には執務室にいらっしゃいます」
「なるほど」
つまり、彼が執務室に来るまでのあいだに出勤するのが望ましいだろう。オティリエはメモをとりながら、あとでこれからの生活を頭のなかでシミュレーションしておこうと決心した。
「さて、こちらがヴァーリック様の執務室です」
エアニーが足を止めたのは他の部屋よりも明らかに重厚な扉の前だった。外には騎士たちが控えており、二人を見るなり恭しく頭を下げる。
オティリエはエアニーにバレぬよう、少しだけ首を傾げた。
「ここから先が執務用スペース――行政塔です」
エアニーが言う。使用人たちの塔とはガラリと印象が変わり、空気がピンと張り詰めているように感じられた。オティリエが姿勢を正すと、エアニーが少しだけ瞳を細める。次いで【いい心がけです】と心の声が聞こえてきた。
ヴァーリックの執務室はそこからさらに奥まったところにあるとのことで、オティリエはエアニーとともに歩を進める。
「規定上の始業時間は朝九時です。あなたの部屋からヴァーリック様の執務室までかなり距離がありますので、遅刻しないようにいらっしゃってください」
「わかりました。あの、ヴァーリック様は何時に執務室にいらっしゃるんですか?」
「……いい質問です。ヴァーリック様は十五分前には執務室にいらっしゃいます」
「なるほど」
つまり、彼が執務室に来るまでのあいだに出勤するのが望ましいだろう。オティリエはメモをとりながら、あとでこれからの生活を頭のなかでシミュレーションしておこうと決心した。
「さて、こちらがヴァーリック様の執務室です」
エアニーが足を止めたのは他の部屋よりも明らかに重厚な扉の前だった。外には騎士たちが控えており、二人を見るなり恭しく頭を下げる。