弔いのグラタン

 中学校のとき、私はバレー部だった。
 その部活のイベントに来てくれた。

 私とひと回り年が違うマユミサン、マユミサンとひと回りくらい年が違う友達のお母さん。

 そんな中で、マユミサンは、普通だった。ホワイトソース中のバターように滑らかに溶け込んでいたのだ。

 ネットを挟んで、私が、右側からクロスにスパイクした。
 8人のオバサンの中でマユミサンは、力強くコートを蹴った。
 マユミサンの細い手首の上で、青と白のバレーボールは軽やかに弾んだ。

『中学から、大学までバレー一筋だったんだ』
と話していたマユミサンには、簡単なラインだったに違いない。

 悔しさなんて、すぐに吹っ飛んでしまった。
 私に向けて、ピースサインをするマユミサンの笑顔は、ピンクのあの花だったから。

 私のハーフパンツとTシャツは、このときだけは、マユミサンのものだった。

 気持ち悪いかもしれないけれど、クローゼットの奥の、まだ空けていないダンボールの中にはその2枚が入っている。


 耐熱ボウルの中のホワイトソースはまだゆるい。
 塩、胡椒、隠し味のコンソメスープの素を入れる。
 泡だて器でぐるぐるぐるぐる。
 再び、レンジへ。
 
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