弔いのグラタン
3
中学校のとき、私はバレー部だった。
その部活のイベントに来てくれた。
私とひと回り年が違うマユミサン、マユミサンとひと回りくらい年が違う友達のお母さん。
そんな中で、マユミサンは、普通だった。ホワイトソース中のバターように滑らかに溶け込んでいたのだ。
ネットを挟んで、私が、右側からクロスにスパイクした。
8人のオバサンの中でマユミサンは、力強くコートを蹴った。
マユミサンの細い手首の上で、青と白のバレーボールは軽やかに弾んだ。
『中学から、大学までバレー一筋だったんだ』
と話していたマユミサンには、簡単なラインだったに違いない。
悔しさなんて、すぐに吹っ飛んでしまった。
私に向けて、ピースサインをするマユミサンの笑顔は、ピンクのあの花だったから。
私のハーフパンツとTシャツは、このときだけは、マユミサンのものだった。
気持ち悪いかもしれないけれど、クローゼットの奥の、まだ空けていないダンボールの中にはその2枚が入っている。
耐熱ボウルの中のホワイトソースはまだゆるい。
塩、胡椒、隠し味のコンソメスープの素を入れる。
泡だて器でぐるぐるぐるぐる。
再び、レンジへ。