kissしてサイキック‼~無能力者のハズの私が生徒会に溺愛される⁉~
12:映画館で
日曜日。私は軽い足取りでいつもの時間に女子寮を出た。
寮門にはすっかり見慣れた後ろ姿。思わず頬が緩む。
「まい先輩! おはようございます!」
「おはよう! ごめんね、二週連続で映画に付き合わせちゃってさ。今月は観たい映画の公開日がいっぱい重なってるんだよね」
「いえいえ。私もまい先輩と一緒に映画に見るの、好きですから」
「ふふ。可愛いこと言っちゃって~!」
まい先輩は嬉しそうに顔を綻ばせた。
今日先輩と一緒にみる映画もアメコミ原作のヒーローを主人公にした映画だった。まい先輩と並んで座席に座る。
映画が始まると、美しい映像とヒロインとヒーローのじれったい恋愛、これから始まるであろう冒険の匂いにそれはもう興奮した。
映画の途中──ふと、私はまい先輩の様子を知りたくて、先輩の横顔を盗み見る。先輩は見られていることにも全く気付かない程真剣に映画に集中していた。
それほど、ヒーローが好きなんだろうな……。まい先輩と初めて会ったとき、こんな一面があるだなんて思いもしなかった。
──しかし、その時だ。
ゾワリ。
私は右の太ももを誰かに触られているのを感じた。
……男の人の、手?! すぐに右隣を見たが、そこにいた男性とは目が合わない。
でも、手は私の太ももを厭らしくなでてくる。
嘘、なんで!? 嫌だ!!
私は気持ち悪くなって立ち上がろうとしたけれど──まい先輩の邪魔をしたくはない、と思ってしまった。
でも、このままは絶対に嫌!
男の手はさらに大胆に私の太ももを撫でまわしてくる。私が黙っているのを見て、調子に乗っているようだ。
声をださなきゃ、立ち上がらなきゃ、でも、でも……いざ、となると声が出ない……!!
そんなことを考えている間にも男の人の手はどんどん私の中心へ手を近づけていき──私は息を呑んだ。
「っひっ……」
「? ……茉莉?」
まい先輩が私の異変に気づき──私の視線の先を辿る。
「──あ?」
まい先輩の喉から発せられたとは思えない低い声が響いた。
次の瞬間、まい先輩が立ち上がり、素早く男の人の腕を掴む。
「──出ろ。今すぐにだ、クソ野郎」
「っ!!」
まい先輩は有無を言わさぬような顔で男の人を連れていく。私は呆然としてしまったが、我に返るなり、映画館を出た。後ろでヒソヒソ話が聞こえたが、映画の邪魔をしてごめんなさいと心の中で謝った。
その後、シアターを出る途端に──私は目を疑う事になる。私の太ももを撫でていた男が見たことのない人に胸倉を掴まれていたから。
「てめぇ、茉莉になにしてんだ? どこ触ってたんだ?!! あぁ!!?」
「ひ、ひぃぃいいいいいいい!!!!」
「え、えぇ!!?」
その人は短いツンツン頭に180は超えているだろう高身長、そして服の上からもわかるくらい筋肉質な人だった。というか、服がギチギチで破れそうだ。服に収まり切れなかった立派な腹筋が晒されている。
そしておそらくその人が着ている服からして──その人はまい先輩だった。
「ど、どうしたんですか!!!?」
映画館のスタッフの人が何人かこちらに走ってくる。私はそれに気づき、慌ててまい先輩の腕を掴んだ。
「せ、せせ先輩!!! 落ち着いてください!!! お願いします!!」
「!! ……茉莉……でも……こいつ!!!!」
「今のままじゃ、まい先輩が悪いようになっちゃう可能性が! それに姿! 姿!」
まい先輩はハッとして自分の姿を見る。みるみる顔を青くする先輩。すると先輩の身体が縮み、元に戻っていった。元の綺麗な女性の姿の先輩は私を見て、泣きそうな顔をしている。
「ごめん……僕、僕……!!」
「せ、先輩?」
「…………っ!」
まい先輩の身体が震えていることに気づき、そっと手を伸ばしたが──その前に先輩はぱっと笑顔を張り付けていた。
「ごめんごめん! 冷静にならないとね? ほら、そこで震えてる痴漢男を引き渡そう」
まい先輩はそれから私を女子寮に送るまで何事もなかったかのように振る舞っていた。でも、私はどうしても──不安そうに私の顔を覗きこむ先輩の顔が忘れられない。結局痴漢男は警察に連れていかれたけれど──私の心は晴れないままだ。
寮門にはすっかり見慣れた後ろ姿。思わず頬が緩む。
「まい先輩! おはようございます!」
「おはよう! ごめんね、二週連続で映画に付き合わせちゃってさ。今月は観たい映画の公開日がいっぱい重なってるんだよね」
「いえいえ。私もまい先輩と一緒に映画に見るの、好きですから」
「ふふ。可愛いこと言っちゃって~!」
まい先輩は嬉しそうに顔を綻ばせた。
今日先輩と一緒にみる映画もアメコミ原作のヒーローを主人公にした映画だった。まい先輩と並んで座席に座る。
映画が始まると、美しい映像とヒロインとヒーローのじれったい恋愛、これから始まるであろう冒険の匂いにそれはもう興奮した。
映画の途中──ふと、私はまい先輩の様子を知りたくて、先輩の横顔を盗み見る。先輩は見られていることにも全く気付かない程真剣に映画に集中していた。
それほど、ヒーローが好きなんだろうな……。まい先輩と初めて会ったとき、こんな一面があるだなんて思いもしなかった。
──しかし、その時だ。
ゾワリ。
私は右の太ももを誰かに触られているのを感じた。
……男の人の、手?! すぐに右隣を見たが、そこにいた男性とは目が合わない。
でも、手は私の太ももを厭らしくなでてくる。
嘘、なんで!? 嫌だ!!
私は気持ち悪くなって立ち上がろうとしたけれど──まい先輩の邪魔をしたくはない、と思ってしまった。
でも、このままは絶対に嫌!
男の手はさらに大胆に私の太ももを撫でまわしてくる。私が黙っているのを見て、調子に乗っているようだ。
声をださなきゃ、立ち上がらなきゃ、でも、でも……いざ、となると声が出ない……!!
そんなことを考えている間にも男の人の手はどんどん私の中心へ手を近づけていき──私は息を呑んだ。
「っひっ……」
「? ……茉莉?」
まい先輩が私の異変に気づき──私の視線の先を辿る。
「──あ?」
まい先輩の喉から発せられたとは思えない低い声が響いた。
次の瞬間、まい先輩が立ち上がり、素早く男の人の腕を掴む。
「──出ろ。今すぐにだ、クソ野郎」
「っ!!」
まい先輩は有無を言わさぬような顔で男の人を連れていく。私は呆然としてしまったが、我に返るなり、映画館を出た。後ろでヒソヒソ話が聞こえたが、映画の邪魔をしてごめんなさいと心の中で謝った。
その後、シアターを出る途端に──私は目を疑う事になる。私の太ももを撫でていた男が見たことのない人に胸倉を掴まれていたから。
「てめぇ、茉莉になにしてんだ? どこ触ってたんだ?!! あぁ!!?」
「ひ、ひぃぃいいいいいいい!!!!」
「え、えぇ!!?」
その人は短いツンツン頭に180は超えているだろう高身長、そして服の上からもわかるくらい筋肉質な人だった。というか、服がギチギチで破れそうだ。服に収まり切れなかった立派な腹筋が晒されている。
そしておそらくその人が着ている服からして──その人はまい先輩だった。
「ど、どうしたんですか!!!?」
映画館のスタッフの人が何人かこちらに走ってくる。私はそれに気づき、慌ててまい先輩の腕を掴んだ。
「せ、せせ先輩!!! 落ち着いてください!!! お願いします!!」
「!! ……茉莉……でも……こいつ!!!!」
「今のままじゃ、まい先輩が悪いようになっちゃう可能性が! それに姿! 姿!」
まい先輩はハッとして自分の姿を見る。みるみる顔を青くする先輩。すると先輩の身体が縮み、元に戻っていった。元の綺麗な女性の姿の先輩は私を見て、泣きそうな顔をしている。
「ごめん……僕、僕……!!」
「せ、先輩?」
「…………っ!」
まい先輩の身体が震えていることに気づき、そっと手を伸ばしたが──その前に先輩はぱっと笑顔を張り付けていた。
「ごめんごめん! 冷静にならないとね? ほら、そこで震えてる痴漢男を引き渡そう」
まい先輩はそれから私を女子寮に送るまで何事もなかったかのように振る舞っていた。でも、私はどうしても──不安そうに私の顔を覗きこむ先輩の顔が忘れられない。結局痴漢男は警察に連れていかれたけれど──私の心は晴れないままだ。