kissしてサイキック‼~無能力者のハズの私が生徒会に溺愛される⁉~
3:生徒会メンバー
どうしよう。
入らないといけないのは分かっているのだけど──なかなか足が動いてくれない。配られた地図を頼りに訪れてみた生徒会室の扉が妙に大きく見える。中世ヨーロッパのお屋敷にありそうな、高等学校にあんまり似つかわしくないこの扉がよりノックのハードルを上げているのは否めない。
……私、やっぱり何かしたのだろうか?
すると扉が勝手に開き、私は思わず後ずさった。扉の向こうから現れたのは茶色い天然パーマの青年。生徒会のメンバーだろうか。とりあえずお辞儀をしておく。
「あぁ、君が桜さんだね。丁度迎えに行こうと思っていたんだよ。迷ってなくてよかった。僕は三年、生徒会長の芥川要、よろしくね。さぁ、入って」
「は、はい」
生徒会室の中は教室一つ分程の広さがあり、思ったよりも広かった。やけに豪華な絨毯やソファが設置されており、一年生が主に使用する東棟校舎とは違う、“特別”な雰囲気が漂う。そんな生徒会室のソファに座っている三つの影。生徒会のメンバーだろうか。彼らはジロリと私に視線を寄越す。とても居心地が悪かった。柔和な芥川先輩だけが、今の私の助けだった。
「学園長から話は聞いている。君が戸惑うのも無理はないだろう。新学期早々にごめんね」
「は、はい。……ところで私は何故こんな所にいるのでしょうか?」
私は芥川先輩にソファに促されるままに座る。私がそう尋ねると彼は不思議そうな顔をした。
……んん? 私、なにかおかしいことを言ってしまったのかな?
芥川先輩が隣に座っていた眼鏡男と顔を見合わせる。
「話がかみ合っていませんね」
「えーっと、つまり、君は生徒会室にこいと言われただけで、何も説明されていないと?」
「え? あ……そうですね。」
そんな私にソファの上で体操座りをしている男の人がわざとらしくため息を吐く。その隣に座る少し童顔な――女の人はマイペースにアイスを啄んでいた。
「まさかだと思うけど、君の能力についても聞かされていないのかな?」
「能力? わ、私は無能力者です、が……」
なんとなく俯いた。芥川先輩は「顔を上げて」と慌てたように言う。
「そ、そうか。これは予想外だ。学園長も適当だな」
「今に始まった事じゃないだろ」
ボソリ、と低音が響く。見れば声の主は体操座りをしている人。
っていうか――この先輩、裸足!? な、なんだか、近寄りがたい人だなぁ……。
私が若干体育座りの先輩に引いていると、ドアがノックされる。入室してきたのは噂の学園長だった。
「ごめんごめん。遅れちゃった。ところでこの子、桜ちゃんのお友達かな?」
「は、離せ!」
「朔!? 何やってんの!?」
「君が心配で、生徒会の扉に耳をつけていたよ」
「ち、ちが! 俺はただっ、幼馴染が変な部屋に連れていかれたから!」
「あぁ、幼馴染なんだ。それなら盗み聞きではなく、堂々とここで聞きなさい。君も聞く資格はあるだろう」
「学園長? 私は一体どうしてここに呼ばれたのでしょうか?」
そう、本題はそこだ。先程から話が見えない。学園長や生徒会の先輩達の意図がどうしてもわからないのだ。早く答えが聞きたかった。
「ごめん。説明するよ」
学園長はそんな前置きをおいて、とんでもないことを言いだした。
「とりあえず単刀直入に言うと、桜さんにはこの生徒会に入ってもらいたいんだ」
ポカンと口を開ける私と朔。学園長はそんな私達を見て、呑気に笑っている。
「い、いやいや先生? 私は今日入学したばかりで――」
「驚くのも無理はないね。ふむ、どこから説明しようか……。いや、じゃあ言い方を変えようかな。君に生徒会に入ってほしいっていうより、君を私の保護下に置きたいんだ」
学園長の言葉でさらに謎が深まってしまった。私は唯一話が通じそうな芥川先輩に説明を求めることにする。
「こほん。えっと、僕が話すよ。桜さんは自分を無能力者だと思っているんだよね?」
「いや、桜は無能力者と思っているじゃなく、無能力者っすよ」
「君は黙っていなさい。話がややこしくなる」
「あ??」
眼鏡を掛けた先輩のきつい一言に朔の眉がピクリと吊り上がる。私はそんな朔を宥めつつ、芥川先輩に続きを話すように頷いた。
「自分の能力に気づかないなんてよくある話だしね」
「それって──」
「うん。君は能力者なんだよ、桜さん」
私と朔はタイミングよく目を合わせる。
意味が分からない……。仮に私が能力者だとしても、初対面の先輩方や学園長にはなんでそれが分かるの?
そんな私の疑問に答えるかのように口を開いたのは学園長。
「私の能力は《能力鑑定》と言ってね。簡単に言うと見た相手の能力がどういうものかわかるんだ。一見あんまり役に立たなそうな能力だけど、この社会だと案外これが……ってごめん、話が逸れてしまった。それで──私の能力によると、君の能力は非常に厄介なものだったんだ」
「能力を見破る能力? えぇ、でも、わ、私が能力者なら──どうして私は今までそれに気づかなかったのですか?」
「あぁ、それは簡単な話だよ。君がまだ──」
「学園長。年頃の女の子にそういう事を軽々しく言わないでください」
芥川先輩がそう注意して、少し話しづらそうに眉を下げる。
「桜さん。本当にいいづらいんだけどね。もし気を悪くしてしまったら、すまない」
「は、はい。大丈夫です。教えてください」
「分かった。その──君はね、接吻をした相手の能力を奪ったり、与えたりする事ができる能力なんだよ」
入らないといけないのは分かっているのだけど──なかなか足が動いてくれない。配られた地図を頼りに訪れてみた生徒会室の扉が妙に大きく見える。中世ヨーロッパのお屋敷にありそうな、高等学校にあんまり似つかわしくないこの扉がよりノックのハードルを上げているのは否めない。
……私、やっぱり何かしたのだろうか?
すると扉が勝手に開き、私は思わず後ずさった。扉の向こうから現れたのは茶色い天然パーマの青年。生徒会のメンバーだろうか。とりあえずお辞儀をしておく。
「あぁ、君が桜さんだね。丁度迎えに行こうと思っていたんだよ。迷ってなくてよかった。僕は三年、生徒会長の芥川要、よろしくね。さぁ、入って」
「は、はい」
生徒会室の中は教室一つ分程の広さがあり、思ったよりも広かった。やけに豪華な絨毯やソファが設置されており、一年生が主に使用する東棟校舎とは違う、“特別”な雰囲気が漂う。そんな生徒会室のソファに座っている三つの影。生徒会のメンバーだろうか。彼らはジロリと私に視線を寄越す。とても居心地が悪かった。柔和な芥川先輩だけが、今の私の助けだった。
「学園長から話は聞いている。君が戸惑うのも無理はないだろう。新学期早々にごめんね」
「は、はい。……ところで私は何故こんな所にいるのでしょうか?」
私は芥川先輩にソファに促されるままに座る。私がそう尋ねると彼は不思議そうな顔をした。
……んん? 私、なにかおかしいことを言ってしまったのかな?
芥川先輩が隣に座っていた眼鏡男と顔を見合わせる。
「話がかみ合っていませんね」
「えーっと、つまり、君は生徒会室にこいと言われただけで、何も説明されていないと?」
「え? あ……そうですね。」
そんな私にソファの上で体操座りをしている男の人がわざとらしくため息を吐く。その隣に座る少し童顔な――女の人はマイペースにアイスを啄んでいた。
「まさかだと思うけど、君の能力についても聞かされていないのかな?」
「能力? わ、私は無能力者です、が……」
なんとなく俯いた。芥川先輩は「顔を上げて」と慌てたように言う。
「そ、そうか。これは予想外だ。学園長も適当だな」
「今に始まった事じゃないだろ」
ボソリ、と低音が響く。見れば声の主は体操座りをしている人。
っていうか――この先輩、裸足!? な、なんだか、近寄りがたい人だなぁ……。
私が若干体育座りの先輩に引いていると、ドアがノックされる。入室してきたのは噂の学園長だった。
「ごめんごめん。遅れちゃった。ところでこの子、桜ちゃんのお友達かな?」
「は、離せ!」
「朔!? 何やってんの!?」
「君が心配で、生徒会の扉に耳をつけていたよ」
「ち、ちが! 俺はただっ、幼馴染が変な部屋に連れていかれたから!」
「あぁ、幼馴染なんだ。それなら盗み聞きではなく、堂々とここで聞きなさい。君も聞く資格はあるだろう」
「学園長? 私は一体どうしてここに呼ばれたのでしょうか?」
そう、本題はそこだ。先程から話が見えない。学園長や生徒会の先輩達の意図がどうしてもわからないのだ。早く答えが聞きたかった。
「ごめん。説明するよ」
学園長はそんな前置きをおいて、とんでもないことを言いだした。
「とりあえず単刀直入に言うと、桜さんにはこの生徒会に入ってもらいたいんだ」
ポカンと口を開ける私と朔。学園長はそんな私達を見て、呑気に笑っている。
「い、いやいや先生? 私は今日入学したばかりで――」
「驚くのも無理はないね。ふむ、どこから説明しようか……。いや、じゃあ言い方を変えようかな。君に生徒会に入ってほしいっていうより、君を私の保護下に置きたいんだ」
学園長の言葉でさらに謎が深まってしまった。私は唯一話が通じそうな芥川先輩に説明を求めることにする。
「こほん。えっと、僕が話すよ。桜さんは自分を無能力者だと思っているんだよね?」
「いや、桜は無能力者と思っているじゃなく、無能力者っすよ」
「君は黙っていなさい。話がややこしくなる」
「あ??」
眼鏡を掛けた先輩のきつい一言に朔の眉がピクリと吊り上がる。私はそんな朔を宥めつつ、芥川先輩に続きを話すように頷いた。
「自分の能力に気づかないなんてよくある話だしね」
「それって──」
「うん。君は能力者なんだよ、桜さん」
私と朔はタイミングよく目を合わせる。
意味が分からない……。仮に私が能力者だとしても、初対面の先輩方や学園長にはなんでそれが分かるの?
そんな私の疑問に答えるかのように口を開いたのは学園長。
「私の能力は《能力鑑定》と言ってね。簡単に言うと見た相手の能力がどういうものかわかるんだ。一見あんまり役に立たなそうな能力だけど、この社会だと案外これが……ってごめん、話が逸れてしまった。それで──私の能力によると、君の能力は非常に厄介なものだったんだ」
「能力を見破る能力? えぇ、でも、わ、私が能力者なら──どうして私は今までそれに気づかなかったのですか?」
「あぁ、それは簡単な話だよ。君がまだ──」
「学園長。年頃の女の子にそういう事を軽々しく言わないでください」
芥川先輩がそう注意して、少し話しづらそうに眉を下げる。
「桜さん。本当にいいづらいんだけどね。もし気を悪くしてしまったら、すまない」
「は、はい。大丈夫です。教えてください」
「分かった。その──君はね、接吻をした相手の能力を奪ったり、与えたりする事ができる能力なんだよ」