kissしてサイキック‼~無能力者のハズの私が生徒会に溺愛される⁉~
4:私の能力
「分かった。その──君はね、接吻をした相手の能力を奪ったり、与えたりする事ができる能力なんだよ」
…………はい?
首を傾げ、眉を顰める。芥川先輩は苦笑していた。
「理解が遅いですね。あなたは未だに接吻をしたことがないのでしょう。だから自分の能力に気づかなかったんですよ」
眼鏡先輩の言葉に顔中が熱くなる。恥ずかしくて、言葉が出てこなかった。
「えー、幼馴染の異性がいるのにキスもしてないの? あはは、そこの不良君って奥手なんだね」
アイスを頬張っていた女の先輩が朔にウインクする。朔は湯気が出るのではと心配してしまうくらい顔を赤らめた。おそらく私も朔と同じくらい顔が赤いだろう。私はどう反応していいのか分からず、熱くなった頬を抑える。
ここで、学園長がわざとらしく咳をして空気を変えた。
「それで話に戻るんだけど、桜さん。君の能力のどこが厄介か分かるかな?」
「えっと、いや、あんまり……。急に言われたので……」
「まだ分からないのですか。この世には無能力者の金持ちが何千人といるんですよ」
眼鏡先輩の言葉にハッとする。
そ、それはつまり、私の能力が本当に能力を奪ったり、その奪った能力を与えたりする能力ならば──
「──金持ち達は喉から手が出る程望んだ能力を手に入れる為に君を狙ってくる」
「能力さえあれば、さらなる地位を手に入れられますからね。表面上、金でなんとか無能力者であることを隠していても限度はあります。そこで、私達は君の能力を《仲介者》と呼ぶことにしました。文字通り、貴女を通じて能力のやり取りが出来ますので。貴女の存在があることによって、能力売買が可能になるんですよ」
「そんな……能力売買だなんて……」
どうにも頭が理解を拒んでいる。唖然としている私を見て、声を上げたのは朔だ。
「桜がそんな能力を持ってるはずねぇだろ! でまかせ言うな!」
「ちっ。めんどくせぇな! なら試してみりゃあいいだろう!」
体操座りをしていた男の人がイラついた様にそう言って、顔を背ける。朔は私を見て、何を言えばいいのか分からないのか、固まっている。
「桜さん。戸惑うのも分かるよ。でも、本当なんだ。君は危険なんだよ。僕達も学園長も、君を保護する意思がある。──あとは、君次第だ」
「あ、えっと……」
何も言えずにいると、安心させるように学園長が私の肩を叩いた。
「これから嫌でも実感するようになるさ。とりあえず君は私や彼らが守ってあげるから安心しなさい。ちなみに君の育ての親にも相談済みだ。両は私の親友だからね」
両。その名前に私は目を見開く。
両というのは私の叔父の名前だ。両親のいない私を今まで育ててくれた大切な家族だった。
そういえば、私に青空学園を進めてくれたのも両君だった。そういう背景があったからなのか。両君の親友ならきっと学園長は悪い人じゃない。それに芥川先輩や学園長の顔を見ていると、今の話が嘘じゃないと分かる。
私は小さく頷いた。自分なりに心の整理がようやくできたのだ。
「半信半疑ではありますが、とりあえず、その、よろしくお願いします!!」
「うん。これから新しい生徒会メンバーとして、よろしくね。桜さん。じゃあ自己紹介だ」
学園長がそう言って、すぐに手が上がった。手の主は勿論芥川先輩だ。
「じゃあ僕から。まぁ、さっきも言ったけど、青空学園生徒会長の芥川要です。改めてよろしくね」
「は、はい!」
改めて芥川先輩を見ると、やはり顔がとても整っている。茶色の天然パーマがより一層芥川先輩の朗らかな雰囲気を演出していた。これぞ少女漫画で言う「王子様系イケメン」ってやつなのかもしれない。
「……篠原結城。副会長です。よろしく」
「お、お願いします!」
先程からきつい言葉のアッパーをかましてくる眼鏡先輩こと篠原先輩も非常に顔が整っている。またまた少女漫画で例えるならば「クール眼鏡イケメン」といったところか。
「花島まいだよ! むさくるしい生徒会にようやく女の子が入ってくれて嬉しいよ! 気軽にまいって呼んでね! ケーキ好き? 冷蔵庫にあるやつ取ってくる!」
「あ、ありがとうございます……!」
花島先輩。ハーフなのだろうか、とっても日本人離れした顔立ちに絹のような金髪。生徒会の紅一点であろう彼女の友好的な態度に私は心から安心した。
……だけど、その、先ほどから体操座りをしている先輩からは凄く睨まれている。裸足先輩ってお呼びした方がいいだろうか……。
「……ちっ」
しかも舌打ちをされてしまった。よっぽど私のことが気に入らないのだろうか。
と、少し落ち込む私に芥川先輩がすぐにフォローに入ってくれた。
「あいつはああいうやつなんだ。名前は未来空輝。まいとは幼馴染」
裸足先輩こと未来空先輩。なんだか、名前と雰囲気が正反対のような……。
そんな未来空先輩は機嫌が悪そうに立ち上がる。
「俺は部屋に帰るぞ。つまらん用事で呼び出すんじゃねぇよ、クソ会長」
深くパーカーのフードを被ると、先輩は猫背で生徒会室を後にした。後ろで花島……まい先輩がため息を吐いたのが分かった。
「あんなクソ引きこもりなんて気にしないでいいよ、桜」
まい先輩はそう言うと私の横に座り、ケーキの欠片をスプーンに乗せる。
「はい、あーん☆」
「!? い、いただきます」
「うんうん、やっぱり女の子にはケーキだよね! これから毎日おやつがでてくるから覚悟してよ!」
「は、はひ……」
まい先輩は未来空先輩が残した気まずい空気を女神のような笑顔で吹き飛ばしてくれた。しかもこのチーズケーキ、今まで食べたケーキの中でダントツで美味しかった。
……篠原先輩や未来空先輩はまだ少し仲良くなれるとは言い難いかもしれないけど──芥川先輩やまい先輩、学園長はとっても優しそうだし、上手くやっていけそう……なのだろうか?
…………はい?
首を傾げ、眉を顰める。芥川先輩は苦笑していた。
「理解が遅いですね。あなたは未だに接吻をしたことがないのでしょう。だから自分の能力に気づかなかったんですよ」
眼鏡先輩の言葉に顔中が熱くなる。恥ずかしくて、言葉が出てこなかった。
「えー、幼馴染の異性がいるのにキスもしてないの? あはは、そこの不良君って奥手なんだね」
アイスを頬張っていた女の先輩が朔にウインクする。朔は湯気が出るのではと心配してしまうくらい顔を赤らめた。おそらく私も朔と同じくらい顔が赤いだろう。私はどう反応していいのか分からず、熱くなった頬を抑える。
ここで、学園長がわざとらしく咳をして空気を変えた。
「それで話に戻るんだけど、桜さん。君の能力のどこが厄介か分かるかな?」
「えっと、いや、あんまり……。急に言われたので……」
「まだ分からないのですか。この世には無能力者の金持ちが何千人といるんですよ」
眼鏡先輩の言葉にハッとする。
そ、それはつまり、私の能力が本当に能力を奪ったり、その奪った能力を与えたりする能力ならば──
「──金持ち達は喉から手が出る程望んだ能力を手に入れる為に君を狙ってくる」
「能力さえあれば、さらなる地位を手に入れられますからね。表面上、金でなんとか無能力者であることを隠していても限度はあります。そこで、私達は君の能力を《仲介者》と呼ぶことにしました。文字通り、貴女を通じて能力のやり取りが出来ますので。貴女の存在があることによって、能力売買が可能になるんですよ」
「そんな……能力売買だなんて……」
どうにも頭が理解を拒んでいる。唖然としている私を見て、声を上げたのは朔だ。
「桜がそんな能力を持ってるはずねぇだろ! でまかせ言うな!」
「ちっ。めんどくせぇな! なら試してみりゃあいいだろう!」
体操座りをしていた男の人がイラついた様にそう言って、顔を背ける。朔は私を見て、何を言えばいいのか分からないのか、固まっている。
「桜さん。戸惑うのも分かるよ。でも、本当なんだ。君は危険なんだよ。僕達も学園長も、君を保護する意思がある。──あとは、君次第だ」
「あ、えっと……」
何も言えずにいると、安心させるように学園長が私の肩を叩いた。
「これから嫌でも実感するようになるさ。とりあえず君は私や彼らが守ってあげるから安心しなさい。ちなみに君の育ての親にも相談済みだ。両は私の親友だからね」
両。その名前に私は目を見開く。
両というのは私の叔父の名前だ。両親のいない私を今まで育ててくれた大切な家族だった。
そういえば、私に青空学園を進めてくれたのも両君だった。そういう背景があったからなのか。両君の親友ならきっと学園長は悪い人じゃない。それに芥川先輩や学園長の顔を見ていると、今の話が嘘じゃないと分かる。
私は小さく頷いた。自分なりに心の整理がようやくできたのだ。
「半信半疑ではありますが、とりあえず、その、よろしくお願いします!!」
「うん。これから新しい生徒会メンバーとして、よろしくね。桜さん。じゃあ自己紹介だ」
学園長がそう言って、すぐに手が上がった。手の主は勿論芥川先輩だ。
「じゃあ僕から。まぁ、さっきも言ったけど、青空学園生徒会長の芥川要です。改めてよろしくね」
「は、はい!」
改めて芥川先輩を見ると、やはり顔がとても整っている。茶色の天然パーマがより一層芥川先輩の朗らかな雰囲気を演出していた。これぞ少女漫画で言う「王子様系イケメン」ってやつなのかもしれない。
「……篠原結城。副会長です。よろしく」
「お、お願いします!」
先程からきつい言葉のアッパーをかましてくる眼鏡先輩こと篠原先輩も非常に顔が整っている。またまた少女漫画で例えるならば「クール眼鏡イケメン」といったところか。
「花島まいだよ! むさくるしい生徒会にようやく女の子が入ってくれて嬉しいよ! 気軽にまいって呼んでね! ケーキ好き? 冷蔵庫にあるやつ取ってくる!」
「あ、ありがとうございます……!」
花島先輩。ハーフなのだろうか、とっても日本人離れした顔立ちに絹のような金髪。生徒会の紅一点であろう彼女の友好的な態度に私は心から安心した。
……だけど、その、先ほどから体操座りをしている先輩からは凄く睨まれている。裸足先輩ってお呼びした方がいいだろうか……。
「……ちっ」
しかも舌打ちをされてしまった。よっぽど私のことが気に入らないのだろうか。
と、少し落ち込む私に芥川先輩がすぐにフォローに入ってくれた。
「あいつはああいうやつなんだ。名前は未来空輝。まいとは幼馴染」
裸足先輩こと未来空先輩。なんだか、名前と雰囲気が正反対のような……。
そんな未来空先輩は機嫌が悪そうに立ち上がる。
「俺は部屋に帰るぞ。つまらん用事で呼び出すんじゃねぇよ、クソ会長」
深くパーカーのフードを被ると、先輩は猫背で生徒会室を後にした。後ろで花島……まい先輩がため息を吐いたのが分かった。
「あんなクソ引きこもりなんて気にしないでいいよ、桜」
まい先輩はそう言うと私の横に座り、ケーキの欠片をスプーンに乗せる。
「はい、あーん☆」
「!? い、いただきます」
「うんうん、やっぱり女の子にはケーキだよね! これから毎日おやつがでてくるから覚悟してよ!」
「は、はひ……」
まい先輩は未来空先輩が残した気まずい空気を女神のような笑顔で吹き飛ばしてくれた。しかもこのチーズケーキ、今まで食べたケーキの中でダントツで美味しかった。
……篠原先輩や未来空先輩はまだ少し仲良くなれるとは言い難いかもしれないけど──芥川先輩やまい先輩、学園長はとっても優しそうだし、上手くやっていけそう……なのだろうか?