kissしてサイキック‼~無能力者のハズの私が生徒会に溺愛される⁉~
6:実験
「す、するなら、早くしろよ……」
「う、うん」
私は朔の右手に唇を近づける。しかしどうにもその先が出来なかった。
「あーもう! もどかしいー!!!!」
まい先輩が私の頭にチョップを落とし、私は朔の手の甲に思い切り唇を押し付けてしまった。
「うわぁああああああああああああああああ!!」
「きゃあああああああああああああああああ!!」
「うるさっ! たかが手の甲にキスくらいでおおげっさー! 君たち本当に初心なんだね」
「それにしても全く同じタイミングか。流石幼馴染だな」
朔は未だに自分の手の甲を見つめている。
「ご、ごめん。嫌だったよね……。これ、ハンカチ」
「べ、別にいらねー。汚いもんでもねーし!」
「それで、どうなんだ桜さん。能力は使えそうかな?」
「えーっと……」
本当に私が能力者なのか、正直まだ疑っていた。今まで十六年間、自分を無能力者だと思ってきたのだ、そう簡単に常識は覆らない。
そんなことを芥川先輩に伝えると、「じゃあ試してみようか」と提案されたのだ。そこで幼馴染の朔に協力してもらい、今は私が本当に能力者なのか実験している最中だったのだ。朔の手の甲にキスをしたものの、朔の能力を吸い取った実感は今のところない。
ちなみに朔の能力は《人狼》。その名の通り、狼の姿に変身できる能力だけれど……。
「朔っていつもどう変身してるの?」
「あ? んなこと言われてもわっかんねーよ……。敢えて言うなら……」
「敢えて言うなら?」
「踏ん張れば出る。耳と尾が勝手に」
「そんな馬鹿な」
冗談だと思った。試しに私は全身に力を入れてみた。
にょきっ。頭部とお尻から違和感が。
「嘘っ! ついてる! なんかついてるよ!!」
私は思わず頭とお尻を触る。そこにはあるのはずないモフモフが!!
生えているのである。狼の耳と、尻尾が!!
「すごい、周りの音とかよく聞こえる……視力もよくなった気がする……! 匂いも! すごい! 尻尾生えてるってこんな感じなんだ!!!!」
「……決まりだな」
興奮する私を他所に篠原先輩は冷静だ。
これでハッキリした。私は本当に能力者であることが。
私はとりあえず朔の手の甲に再びキスをする。能力を返すためだ。すると、今度は朔に獣の耳と尻尾が生えた。朔の表情が暗くなる。
「……本当に、お前は……仲介者なんだな」
「まーまーまー。そんな顔しないの! 僕達と学園長で桜をしっかり守ればいいんだからさ!」
「そうだね。学園長はああ見えて立場もあるし、頼りになる。情報が洩れることがないなら安全だよ。だから、安心してね。桜さん」
「君が何かヘマをしない限りは安全ですよ。しかしどこから情報が洩れるかわかりません。自分の能力をしっかり自覚した行動をしてくださいよ」
篠原先輩の忠告に私は気を引き締める。
「あと目的は違うといえど、生徒会の仕事はきちんとしてもらうからね。一年生はとりあえず雑務っていう役割なんだ。よろしく」
「は、はい! 頑張ります! これから本当に、ほんっとうに、よろしくお願いします!!」
「……よろしく、お願いします」
朔と一緒に頭を下げる。まい先輩がうんうんと頷きながら、「ようこそ生徒会へ!」と私達を両脇に挟んで抱きしめた。
とりあえず、先輩達は私を守ってくれると言っているのだから、皆悪い人ではないはずだ。もちろん、学園長も。
憧れの高校生活はとんだハプニングから始まったけれど――一生忘れられないくらい素敵な日々にしていきたいと思う。
……まずは生徒会に馴染むことから努力していこう。
「う、うん」
私は朔の右手に唇を近づける。しかしどうにもその先が出来なかった。
「あーもう! もどかしいー!!!!」
まい先輩が私の頭にチョップを落とし、私は朔の手の甲に思い切り唇を押し付けてしまった。
「うわぁああああああああああああああああ!!」
「きゃあああああああああああああああああ!!」
「うるさっ! たかが手の甲にキスくらいでおおげっさー! 君たち本当に初心なんだね」
「それにしても全く同じタイミングか。流石幼馴染だな」
朔は未だに自分の手の甲を見つめている。
「ご、ごめん。嫌だったよね……。これ、ハンカチ」
「べ、別にいらねー。汚いもんでもねーし!」
「それで、どうなんだ桜さん。能力は使えそうかな?」
「えーっと……」
本当に私が能力者なのか、正直まだ疑っていた。今まで十六年間、自分を無能力者だと思ってきたのだ、そう簡単に常識は覆らない。
そんなことを芥川先輩に伝えると、「じゃあ試してみようか」と提案されたのだ。そこで幼馴染の朔に協力してもらい、今は私が本当に能力者なのか実験している最中だったのだ。朔の手の甲にキスをしたものの、朔の能力を吸い取った実感は今のところない。
ちなみに朔の能力は《人狼》。その名の通り、狼の姿に変身できる能力だけれど……。
「朔っていつもどう変身してるの?」
「あ? んなこと言われてもわっかんねーよ……。敢えて言うなら……」
「敢えて言うなら?」
「踏ん張れば出る。耳と尾が勝手に」
「そんな馬鹿な」
冗談だと思った。試しに私は全身に力を入れてみた。
にょきっ。頭部とお尻から違和感が。
「嘘っ! ついてる! なんかついてるよ!!」
私は思わず頭とお尻を触る。そこにはあるのはずないモフモフが!!
生えているのである。狼の耳と、尻尾が!!
「すごい、周りの音とかよく聞こえる……視力もよくなった気がする……! 匂いも! すごい! 尻尾生えてるってこんな感じなんだ!!!!」
「……決まりだな」
興奮する私を他所に篠原先輩は冷静だ。
これでハッキリした。私は本当に能力者であることが。
私はとりあえず朔の手の甲に再びキスをする。能力を返すためだ。すると、今度は朔に獣の耳と尻尾が生えた。朔の表情が暗くなる。
「……本当に、お前は……仲介者なんだな」
「まーまーまー。そんな顔しないの! 僕達と学園長で桜をしっかり守ればいいんだからさ!」
「そうだね。学園長はああ見えて立場もあるし、頼りになる。情報が洩れることがないなら安全だよ。だから、安心してね。桜さん」
「君が何かヘマをしない限りは安全ですよ。しかしどこから情報が洩れるかわかりません。自分の能力をしっかり自覚した行動をしてくださいよ」
篠原先輩の忠告に私は気を引き締める。
「あと目的は違うといえど、生徒会の仕事はきちんとしてもらうからね。一年生はとりあえず雑務っていう役割なんだ。よろしく」
「は、はい! 頑張ります! これから本当に、ほんっとうに、よろしくお願いします!!」
「……よろしく、お願いします」
朔と一緒に頭を下げる。まい先輩がうんうんと頷きながら、「ようこそ生徒会へ!」と私達を両脇に挟んで抱きしめた。
とりあえず、先輩達は私を守ってくれると言っているのだから、皆悪い人ではないはずだ。もちろん、学園長も。
憧れの高校生活はとんだハプニングから始まったけれど――一生忘れられないくらい素敵な日々にしていきたいと思う。
……まずは生徒会に馴染むことから努力していこう。