kissしてサイキック‼~無能力者のハズの私が生徒会に溺愛される⁉~
9:嫌な同級生
先輩が見たがっていたヒーローものの映画はとっても面白かった。まい先輩は未だに興奮しながら、映画の感想を語っている。
「あー! やっぱりこのシリーズ最高! それぞれの作品のヒーローが最後は力を合わせて宇宙人を倒すなんて熱い!!」
「私、出ているヒーローの作品いくつか観てなかったんですが、それでも面白かったです」
「え、もったいない! 今度生徒会で観よう」
するとここで、「あ!」とまい先輩が声を上げる。そして先輩が指で指したのは若者に大人気だという有名なタピオカ専門店だった。
「僕、あの店のイチゴミルクホイップオレオオーレ飲んでみたかったんだよね! 茉莉もどう?」
「イチゴミル……? 何語ですか?」
「イチゴミルクホイップオレオオーレ! すっごくおいしそうなの。ほら、メニューに写真も載ってる!」
確かに先輩の言うイチゴミルクホイップオレオオーレとやらは非常においしそうだった。こういうカフェで女の先輩とお茶をするなんて……なんだか高校生って感じ!
私は先輩に手を引かれるままお店に入った。どのドリンクを飲むか迷ったので先輩と同じものを注文する。目当てのイチゴミルクホイップオレオオーレを手に取った時の先輩の瞳は宝石のようにキラキラしていた。
「ずっと飲みたかったんだよね。写真撮らないと! せっかくいい天気だし、近くの広場にベンチがあるから、そこで飲も?」
子供のようにはしゃぐ先輩に私は思わず頬が緩んでしまう。まい先輩が嬉しそうにしていると、私も嬉しいのだ。先輩に言われるまま、広場のベンチでタピオカを味わう。
しかしそこで──
「ねぇねぇ、そこの彼女達! 一緒にお茶しない? ちょっとでいいからさ! すっげぇ可愛いね? うわぁ、人形みてぇ!」
男の子に、突然話しかけられた。私は顔を強張らせる。
何故なら話しかけてきた二人は──私の中学のクラスメイトだったからだ。二人はまい先輩しか見えていないようでまだ私に気づいていない。
「えー? 僕は可愛い後輩と二人きりがいいからどっかいってくれる?」
「後輩? ……あれ? お前、桜じゃね?」
「っ!」
やっぱり、気付かれちゃうよね……。私は「久しぶり」と笑った。いや、笑えてなかったかもしれないけれど、自分では笑ったつもりだった。
元クラスメイト達は私を見るなり、嘲笑に近い表情を浮かべる。それは中学の時、ずっと向けられてきた顔だ。青空学園は比較的無能力者が多かったし、能力者の人達も差別なんかしない人達だったからこの顔をすっかり忘れていた。
本当は能力者といっても、表面上では私は無能力者なんだ……。
「無能力者の桜じゃん。お前、青空学園に入学したんだって? ま、無能力者のいける学校なんてそれくらいか」
「無能力者は就職とか可哀想だよな。まぁ、せいぜいがんばれよ」
「……あ……」
どうしよう、今まではへらりと笑って相槌をうって流していたけれど──でも、これだけは許せない。
「──謝って!」
「あ?」
「青空学園はすっごく素敵な学校だよ。私のことは馬鹿にしてもいいけど、青空学園と、そこの人達を馬鹿にするのは許せない!」
「……!」
手が震える。男の子二人の冷たい目が怖くて、目を逸らしそうになった。でも目を逸らさない。今は、逸らしちゃいけない時なんだ。
「なんだよ。前みたいにへらへら笑ってりゃいいのに。ここにはいつもお前を守ってた小鳥遊もいねぇんだし。無能力者は無能力者らしく──」
その時だ。突然白い液体が飛び散って、元クラスメイト二人の頭上に降りかかった。
私は目を点にする。まい先輩が見たこともないような怖い顔で二人を睨んでいたからだ。どうやら先輩が二人にタピオカを撒いたらしい。
「な、なにしやがる!!」
「あのさぁ、すっげぇ不快だから早くどっかいってくんない?」
「な!」
「かかったのがタピオカでよかったね? 僕の能力で君達を火あぶりにしてもよかったんだけど」
「え? 火あぶ……!?」
今のまい先輩が嘘をついているとは到底思えなかった。それくらい、先輩の顔は怖い。美人ほど怒ると顔が怖くなるというのは本当だったんだなと実感した。
「さっさと去れっつってんだよ。その不快な面、二度と僕と茉莉に見せんな!!」
元クラスメイト達は先輩の迫力に顔を青くして、さっさとその場を去った。私は思わずポロリと涙を漏らしてしまう。
「まい先輩……」
「ん。怖かったね。あんな不快なやつらに茉莉は中学の時にいじめられてたんだ? ……すっげぇ腹立つ」
「ち、違います! そうじゃなくて、」
「え?」
「先輩、タピオカ、あんなに楽しみにしてたのに……。すみません、私のせいで、タピオカを……」
私はしゃくりあげた。まい先輩はぱちくりと瞬きを繰り返す。
「……っぷ。なにそれ。あんなことあったのに僕のタピオカで泣くなんて。ま、あんなクズの為に食べ物を粗末にするなんて僕も馬鹿だったね。つい頭にきちゃってさ。もう絶対しない! ……ちょっと掃除するね」
そこで、まい先輩は散らばったタピオカを拾い集め始める。私も慌ててそれに倣った。なるべくその場を綺麗に掃除してから、私達は広場を出た。先輩はタピオカ一粒一粒に「粗末にして本当にごめんなさい」と謝っていた。なんだかその様子が面白かったけれど、そんなまい先輩に好感をもった。
「ねぇ、さっき食べ損ねちゃったからさ。茉莉のタピオカ、もらってもいい?」
「えぇ!? そ、それって間接……!!」
「あはは。嘘だよ。そんなことしたら朔君に殺されそーだし!」
そう言ってニヤリと笑うまい先輩。
そんな陽気な彼女が先ほど私の為に真剣に怒ってくれた。勿論、食べ物を粗末にするのはいけないことだけど、私はそれがたまらなく嬉しかったのだ。
(※食べ物を粗末にしてはいけません)
「あー! やっぱりこのシリーズ最高! それぞれの作品のヒーローが最後は力を合わせて宇宙人を倒すなんて熱い!!」
「私、出ているヒーローの作品いくつか観てなかったんですが、それでも面白かったです」
「え、もったいない! 今度生徒会で観よう」
するとここで、「あ!」とまい先輩が声を上げる。そして先輩が指で指したのは若者に大人気だという有名なタピオカ専門店だった。
「僕、あの店のイチゴミルクホイップオレオオーレ飲んでみたかったんだよね! 茉莉もどう?」
「イチゴミル……? 何語ですか?」
「イチゴミルクホイップオレオオーレ! すっごくおいしそうなの。ほら、メニューに写真も載ってる!」
確かに先輩の言うイチゴミルクホイップオレオオーレとやらは非常においしそうだった。こういうカフェで女の先輩とお茶をするなんて……なんだか高校生って感じ!
私は先輩に手を引かれるままお店に入った。どのドリンクを飲むか迷ったので先輩と同じものを注文する。目当てのイチゴミルクホイップオレオオーレを手に取った時の先輩の瞳は宝石のようにキラキラしていた。
「ずっと飲みたかったんだよね。写真撮らないと! せっかくいい天気だし、近くの広場にベンチがあるから、そこで飲も?」
子供のようにはしゃぐ先輩に私は思わず頬が緩んでしまう。まい先輩が嬉しそうにしていると、私も嬉しいのだ。先輩に言われるまま、広場のベンチでタピオカを味わう。
しかしそこで──
「ねぇねぇ、そこの彼女達! 一緒にお茶しない? ちょっとでいいからさ! すっげぇ可愛いね? うわぁ、人形みてぇ!」
男の子に、突然話しかけられた。私は顔を強張らせる。
何故なら話しかけてきた二人は──私の中学のクラスメイトだったからだ。二人はまい先輩しか見えていないようでまだ私に気づいていない。
「えー? 僕は可愛い後輩と二人きりがいいからどっかいってくれる?」
「後輩? ……あれ? お前、桜じゃね?」
「っ!」
やっぱり、気付かれちゃうよね……。私は「久しぶり」と笑った。いや、笑えてなかったかもしれないけれど、自分では笑ったつもりだった。
元クラスメイト達は私を見るなり、嘲笑に近い表情を浮かべる。それは中学の時、ずっと向けられてきた顔だ。青空学園は比較的無能力者が多かったし、能力者の人達も差別なんかしない人達だったからこの顔をすっかり忘れていた。
本当は能力者といっても、表面上では私は無能力者なんだ……。
「無能力者の桜じゃん。お前、青空学園に入学したんだって? ま、無能力者のいける学校なんてそれくらいか」
「無能力者は就職とか可哀想だよな。まぁ、せいぜいがんばれよ」
「……あ……」
どうしよう、今まではへらりと笑って相槌をうって流していたけれど──でも、これだけは許せない。
「──謝って!」
「あ?」
「青空学園はすっごく素敵な学校だよ。私のことは馬鹿にしてもいいけど、青空学園と、そこの人達を馬鹿にするのは許せない!」
「……!」
手が震える。男の子二人の冷たい目が怖くて、目を逸らしそうになった。でも目を逸らさない。今は、逸らしちゃいけない時なんだ。
「なんだよ。前みたいにへらへら笑ってりゃいいのに。ここにはいつもお前を守ってた小鳥遊もいねぇんだし。無能力者は無能力者らしく──」
その時だ。突然白い液体が飛び散って、元クラスメイト二人の頭上に降りかかった。
私は目を点にする。まい先輩が見たこともないような怖い顔で二人を睨んでいたからだ。どうやら先輩が二人にタピオカを撒いたらしい。
「な、なにしやがる!!」
「あのさぁ、すっげぇ不快だから早くどっかいってくんない?」
「な!」
「かかったのがタピオカでよかったね? 僕の能力で君達を火あぶりにしてもよかったんだけど」
「え? 火あぶ……!?」
今のまい先輩が嘘をついているとは到底思えなかった。それくらい、先輩の顔は怖い。美人ほど怒ると顔が怖くなるというのは本当だったんだなと実感した。
「さっさと去れっつってんだよ。その不快な面、二度と僕と茉莉に見せんな!!」
元クラスメイト達は先輩の迫力に顔を青くして、さっさとその場を去った。私は思わずポロリと涙を漏らしてしまう。
「まい先輩……」
「ん。怖かったね。あんな不快なやつらに茉莉は中学の時にいじめられてたんだ? ……すっげぇ腹立つ」
「ち、違います! そうじゃなくて、」
「え?」
「先輩、タピオカ、あんなに楽しみにしてたのに……。すみません、私のせいで、タピオカを……」
私はしゃくりあげた。まい先輩はぱちくりと瞬きを繰り返す。
「……っぷ。なにそれ。あんなことあったのに僕のタピオカで泣くなんて。ま、あんなクズの為に食べ物を粗末にするなんて僕も馬鹿だったね。つい頭にきちゃってさ。もう絶対しない! ……ちょっと掃除するね」
そこで、まい先輩は散らばったタピオカを拾い集め始める。私も慌ててそれに倣った。なるべくその場を綺麗に掃除してから、私達は広場を出た。先輩はタピオカ一粒一粒に「粗末にして本当にごめんなさい」と謝っていた。なんだかその様子が面白かったけれど、そんなまい先輩に好感をもった。
「ねぇ、さっき食べ損ねちゃったからさ。茉莉のタピオカ、もらってもいい?」
「えぇ!? そ、それって間接……!!」
「あはは。嘘だよ。そんなことしたら朔君に殺されそーだし!」
そう言ってニヤリと笑うまい先輩。
そんな陽気な彼女が先ほど私の為に真剣に怒ってくれた。勿論、食べ物を粗末にするのはいけないことだけど、私はそれがたまらなく嬉しかったのだ。
(※食べ物を粗末にしてはいけません)