このままずっと甘い夜を 〜再会した元恋人は溢れる愛を押さえきれない〜
『そうだな。それが手っ取り早い方法ではあるが』


昨日の話を思い出したら、決して手放しに喜べるはずがなかった。


もし、わたしが名取くんの子どもを妊娠しているとわかれば――。


いやでも想像ができてしまった。


この子は、きっと利益のために利用される。

だけど、だからといって堕ろすという選択肢は絶対にない。


なんとしてでも、わたしがこの子を守る。

そのために、わたしが妊娠していることを知られてはいけない。


だから、わたしは決心した。

この家から出ていくと。


3人が帰ってくるのが遅いことをいいことに、わたしは支度を整えた。


この子はだれにも知られず、わたしが1人で育ててみせる。


わたしは、出ていく旨を書いた置き手紙だけを残し、富士川家から姿を消したのだった。
< 56 / 88 >

この作品をシェア

pagetop