このままずっと甘い夜を 〜再会した元恋人は溢れる愛を押さえきれない〜
名取くんはもちろん知らない。

わたしが富士川家を逃げ出したことは。


「くれぐれも無理しないように…!仕事が片付いたら、またくるからっ」

「ありがとう。でも、ただの疲労だろうからわざわざいいよ。それよりも、名取くんは早く会社に戻って」

「…ああ。じゃあ、澪…」

「うん」


わたしは、名取くんに微笑みながら手を振った。


今回は偶然名取くんに助けてもらったけど、本来ならもう名取くんにも会わないつもりでいた。

わたしが名取くんの子どもを妊娠しているとなったら、名取グループに迷惑がかかるかもしれないから。


だから、名取くんと会うのは本当にこれが最後。


名取くんが病室のドアを開けると、ちょうど看護師さんを連れた病院の先生がやってきた。


名取くんは軽く会釈すると病室から出ていった。
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