皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?

その一カ月後、エリーヌはパーティーに出席するため、エドガーに付き添われて皇都へやって来た。

移動には丸一日かかるため、パーティーの二日前に出発。馬車に揺られて初めて訪れた皇都はランシヨンとは比べ物にならないほど華やかで、広場周辺には交易商人が宿泊や商談のために使う商館や、都市外部の騎士が駐留するための住居であるポデスタ、食料品やドレス、生活必需品などを売る店などが賑やかに軒を連ねる。

目に入るものすべてが新鮮で、エリーヌは窓から見える景色に目を奪われた。

(さすが皇都だわ。人もいっぱい……)

街を歩く女性たちはシンプルなエプロンドレスだが、色使いや着こなしがおしゃれだ。

ダリルは魔石研究家として皇族からの信頼や扱いがとても厚いようで、エリーヌたちは彼の計らいにより宮殿がある敷地内の珊瑚宮の部屋で一夜を過ごした。

エリーヌが暮らすヴィルトール家はランシヨンでは大きな屋敷だが、珊瑚宮は大きさも豪華さも規模が違う。それは至極当然ではあるが、ランシヨンから出たことのないエリーヌは圧倒されるばかり。重厚な石の建築物は繊細な意匠が施され、どこを見ても溜息が漏れてしまうのだ。

目映く燦然と輝く燭台、壁面に施された細かなレリーフやエレガントな調度品、どれもこれも素晴らしいというひと言に尽きる。
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