皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?
なにより天井がものすごく高い。見上げると首を痛めてしまうほどの高さは、ランシヨンではお目にかかれないものだ。

ここには遠方から招いた客人が宿泊したり、有力貴族たちが暮らしたりしているらしい。

翌朝、珊瑚宮づきの侍女が部屋に現れた。昨日とはべつの女性だ。
エリーヌと同じくらいの歳だろう。ハニーブラウンの髪をおだんごにしてまとめ、目元がぱっちりとしたかわいらしい顔立ちをしている。

ストンとしたダークブラウンのドレスに白いエプロンは、珊瑚宮で決められた服装みたいだ。部屋へ案内されるときに見かけた侍女たちも、みな一様に同じスタイルだった。

ダリルより【侍女はこちらでご用意いたします】との書簡が届いたため、普段仕えている侍女は連れてきていない。
おそらく侯爵令嬢とはいえ、地方から出てくるエリーヌたちが大所帯で目立つのを避けるためだろう。今回の招待は皇族の希望ではなくダリルの口添えのため、控えめにするよう皇族から達しがあったのかもしれないとエリーヌは考えていた。


「エリーヌ様、アガットと申します。お召し替えをお手伝いさせていただきたいのですがよろしいでしょうか」
「お願いします」


両手を前で揃え、かしこまって挨拶をする彼女に微笑み返した。
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