皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?
エリーヌの警護を任されているニコライや侍女のアガットならまだしも、皇妃の立場を利用して大公を私用で使っていると周囲に思われるのはリオネルの評判まで落としかねない。


「それとお礼が遅くなりましたが、いつも綺麗なお花をお届けくださりありがとうございます」


オスカーが顔を曇らせたため、エリーヌは急いでべつの話題を振った。


「なかなかお目通りは叶いませんが、贈り物は受け取っていただけるかと」


今後は控えてほしいと伝えたいが、手伝いを遠慮したうえ、さらに拒絶するのは憚られる。
するとエリーヌの心中を察したのか、ニコライが一歩前に歩み出た。


「オスカー大公殿下、大変心苦しいのですが、皇妃様へ贈り物をされる場合は今後、皇帝陛下を通してしていただけますでしょうか。よからぬ噂を立てられるのは大公殿下にも不利益ではないかと存じます」


ニコライは目線を少し下げ、努めて真摯にお願いした。
皇帝を差し置き、皇妃にちょっかいを出していると思われかねない。オスカーも立場上それは避けたいだろう。
< 133 / 321 >

この作品をシェア

pagetop