皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?
「では、すぐに準備しますので、ここで少々お待ちくださいませ」


馬車に向かって駆け出したアガットとセバスカルは、すぐに大きなバスケットをふたつとブランケットを持って戻った。

草の上にそれを敷き、エリーヌたちに座るよう勧める。


「ありがとう、アガット」


バスケットから紅茶セットを取り出したアガットは、ポットに水を注いでニコライに手渡した。


「アンリ様、お願いします」


示し合わせていたのか、ニコライはごく自然にアンリの胸のあたりにポットを差し出す。

(いったいなにを……?)

不思議に思いつつ、エリーヌがそのやり取りを見守っていると――。


(フレイム)


アンリが唱えた瞬間、ポットの底に炎が立ち上った。
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