皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?
「さすがアンリ様ですね」


ついまじまじと魔石を見ていると、アンリがふっと笑みを漏らした。


「エリーヌといると毒気が抜かれちゃうね」
「……毒気、でございますか? アンリ様にそのようなものが?」


天真爛漫な彼のどこにそんなものがあるのかと、大真面目にアンリを見つめる。


「ないように見えるのだとしたら、僕もポーカーフェイスがなかなか上手みたいだ」
「ふふ、そのようですね」


胸を張っておどけるアンリにエリーヌは微笑み返した。


「アンリ様のおかげで難なくお湯が沸かせて助かります」
「火はこの程度しか使えないけど、役に立ってよかったよ」


湧いたお湯で紅茶を淹れ、焼き菓子をみんなで頬張る。


「この焼き菓子、おいしい。ね? 」
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