皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?
「それはよかったです」


美しい景色と清々しい空気に触れ、ふとリオネルを思い出した。

(陛下もいらしたらよかったのに)

毎日忙しなく働いている彼だからこそ、こうしてリラックスできる時間を持てたら気分的に違うだろう。

(今度お誘いしてみようかしら)

まだ見ぬ未来を思い描いてエリーヌは胸が弾んだ。


「アンリ様、そろそろ帰りましょうか」


ゆっくりお茶を飲んで歓談し、日も傾いてきた。


「そうだね」
「では片づけますので少々お待ちくださいませ。あっ、エリーヌ様はお座りになっていてください」


飲み終えたティーカップをバケットに収納しはじめたエリーヌをアガットが止める。


「いいのよ、このくらいやらせて。あまり甘やかされると、それがあたり前になってしまうわ」
「皇妃様なんですから、それでいいのです」
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