皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?
ミッテール皇国ではより魔力の強い子孫を残していくために、皇妃にもそれなりの魔力が求められる。つまりエリーヌは候補には入りようもない。
それにエリーヌを招待したダリルの目的はエリーヌの魔石だ。皇妃探しとはべつ。魔石研究者として、なんの効力も持たない魔石に興味を惹かれているだけである。
もちろんエリーヌはそれを残念には思っておらず、むしろ皇妃候補なんて恐れ多い話でしかない。
「それにしましても、とっても素敵なドレスでございますね」
アガットが唐突に話題を変えて褒める。妃候補としてここへ呼ばれたのではないと知り、エリーヌが気落ちしていると思ったのだろう。気遣いのできる侍女みたいだ。
エリーヌは、瑠璃色のシルクの生地に白いレースがあしらわれたドレスに着替えを終えていた。腰から下にはグレーのシフォンが幾重にも巻かれ、足元で軽やかに揺れる。
宮殿に招かれたには恥をかかぬよう、ランシヨンでも指折りの仕立て屋に急遽頼んだものだ。
「ありがとうございます。ほかのご令嬢たちの前に出ても大丈夫かしら」
「もちろんでございますわ。エリーヌ様はもとが美しゅうございますから、全然引けを取らないと存じます。これを付けて完成です」
それにエリーヌを招待したダリルの目的はエリーヌの魔石だ。皇妃探しとはべつ。魔石研究者として、なんの効力も持たない魔石に興味を惹かれているだけである。
もちろんエリーヌはそれを残念には思っておらず、むしろ皇妃候補なんて恐れ多い話でしかない。
「それにしましても、とっても素敵なドレスでございますね」
アガットが唐突に話題を変えて褒める。妃候補としてここへ呼ばれたのではないと知り、エリーヌが気落ちしていると思ったのだろう。気遣いのできる侍女みたいだ。
エリーヌは、瑠璃色のシルクの生地に白いレースがあしらわれたドレスに着替えを終えていた。腰から下にはグレーのシフォンが幾重にも巻かれ、足元で軽やかに揺れる。
宮殿に招かれたには恥をかかぬよう、ランシヨンでも指折りの仕立て屋に急遽頼んだものだ。
「ありがとうございます。ほかのご令嬢たちの前に出ても大丈夫かしら」
「もちろんでございますわ。エリーヌ様はもとが美しゅうございますから、全然引けを取らないと存じます。これを付けて完成です」