皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?
彼女の父、マルコリンだった。
「どうかしたのですか?」
「ノーマンド殿がお見えなのだ」
「……ノーマンド様が?」
争いの火種になっている鉱山を持つ国の王子だ。
ミュリエルとマティアスの国は鉱山の利権を奪い合う形で戦争が勃発し、ノーマンドはこれ幸いとミュリエルとの婚姻を望んでいるのだ。鉱山が欲しければ、ミュリエルを妃としてよこせと。
聖女として名高いミュリエルは、その美貌も大陸では有名であった。ミュリエルを妃にと願う国もひとつやふたつではなかった。
しかし最強と言われる金色の魔石を持つマティアスとの婚姻が決まれば、どの国も黙る以外にない。無理にミュリエルを奪おうとすれば、恐ろしい報復が待っているだろうから。
ところがそのふたりの婚姻は、両国の戦により解消されたも同然。それまでおとなしくしていた第三国が次々とミュリエルを迎えたいと願った。
美貌もさることながら、聖なる存在が国の安寧に大きく寄与するからである。
その中で優位に立っているのがノーマンドの国。ミュリエルの父マルコリンも、彼女を嫁がせることで鉱山の利権を手に入れたいと考えていた。
つまり婚姻の障害になるものは、ミュリエルの気持ち以外にない。そしてそれがとても脆い障害であるのは、彼女自身も痛いほど感じていた。
「どうかしたのですか?」
「ノーマンド殿がお見えなのだ」
「……ノーマンド様が?」
争いの火種になっている鉱山を持つ国の王子だ。
ミュリエルとマティアスの国は鉱山の利権を奪い合う形で戦争が勃発し、ノーマンドはこれ幸いとミュリエルとの婚姻を望んでいるのだ。鉱山が欲しければ、ミュリエルを妃としてよこせと。
聖女として名高いミュリエルは、その美貌も大陸では有名であった。ミュリエルを妃にと願う国もひとつやふたつではなかった。
しかし最強と言われる金色の魔石を持つマティアスとの婚姻が決まれば、どの国も黙る以外にない。無理にミュリエルを奪おうとすれば、恐ろしい報復が待っているだろうから。
ところがそのふたりの婚姻は、両国の戦により解消されたも同然。それまでおとなしくしていた第三国が次々とミュリエルを迎えたいと願った。
美貌もさることながら、聖なる存在が国の安寧に大きく寄与するからである。
その中で優位に立っているのがノーマンドの国。ミュリエルの父マルコリンも、彼女を嫁がせることで鉱山の利権を手に入れたいと考えていた。
つまり婚姻の障害になるものは、ミュリエルの気持ち以外にない。そしてそれがとても脆い障害であるのは、彼女自身も痛いほど感じていた。