皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?
その場に居合わせていたニコライの話によれば、もっと深手を負っていたようなのだが。エリーヌがずっと傷口に手をあてていたという、アガットの報告も気になるところである。
宮殿に到着するまでの間、エリーヌはアンリの傷口を押さえ、一心不乱になにかを口走っていたという。その様子は、そばにいたアガットが声を掛けられないほど。なにかに憑りつかれたかのようだったと。
(まさか、この魔石が……?)
リオネルは、握っていた彼女の手のバングルを見た。
初めて見たときは無色透明でなんの変哲もないガラス玉のようだったが、今はどうだ。より透き通り、輝きが増しているではないか。
リオネルは自分の左手首に巻いたバングルを見て、視線を鋭くした。
「エリーヌ、目を覚ましてくれ」
両手で彼女の手を握り訴えかける。
(頼むから、もう一度私に笑いかけてくれ)
エリーヌのそばにいると、どういうわけかリオネルは安らぎを覚える。日夜、気の休まるときのなかったリオネルが、彼女といると心が穏やかになるのだ。
それは生まれてから初めて抱く不思議な感覚だった。
宮殿に到着するまでの間、エリーヌはアンリの傷口を押さえ、一心不乱になにかを口走っていたという。その様子は、そばにいたアガットが声を掛けられないほど。なにかに憑りつかれたかのようだったと。
(まさか、この魔石が……?)
リオネルは、握っていた彼女の手のバングルを見た。
初めて見たときは無色透明でなんの変哲もないガラス玉のようだったが、今はどうだ。より透き通り、輝きが増しているではないか。
リオネルは自分の左手首に巻いたバングルを見て、視線を鋭くした。
「エリーヌ、目を覚ましてくれ」
両手で彼女の手を握り訴えかける。
(頼むから、もう一度私に笑いかけてくれ)
エリーヌのそばにいると、どういうわけかリオネルは安らぎを覚える。日夜、気の休まるときのなかったリオネルが、彼女といると心が穏やかになるのだ。
それは生まれてから初めて抱く不思議な感覚だった。