皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?
握った拳が震える。

マティアスの中に沸々と湧き上がるのは、怒りなのか悲しみなのか。自分でも説明のつかない感情に揺さぶられ、心まで震える。
その複雑で強烈なものが金色のオーラとなり、マティアスの全身を覆いつくす。


「父上、ご覚悟を」


マティアスはステインに照準を定め、指を伸ばした。


電光撃(ライトニングショック)!」


マティアスの指先から電光石火のごとく光が放たれる。ピンと一直線に伸びた稲妻。
しかしステインはひらりと身をかわし、軽々と避けつつ手を伸ばし詠唱した。


氷爆発(アイスブラスト)!」


目の前で氷の塊が爆発。尖った氷の刃が狙うのは、当然ながらマティアスだ。


岩の壁(ロックウォール)


間一髪、壁で防ぐが、その衝撃は城の一部を崩すほど。クラッシュした氷の塊は四方八方に飛び散った。
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