皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?
マティアスの侍従、アーミューが血相を変えて現れた。さすがに騒動は階下にも伝わったのだろう。


「アーミュー、下がれ!」
「ですが! 国王陛下となにがあったのですか!?」
「下がれと言っているのが聞こえないのか!」


彼まで危険に晒すわけにはいかない。
マティアスは声の限りに叫び、退去を促した。
その隙をつき、ステインが氷魔法を展開する。


凍結の深淵(フローズンスピアス)


真っ赤な炎の渦はたちまち深い氷に閉ざされ、煙と化す。さらにステインの攻撃の手は、あろうことかアーミューへ向けられた。

「アーミュー!」

氷砲(アイスキャノン)


詠唱で迎え撃つ猶予はなかった。
マティアスは一足飛びに駆け、アーミューに飛びつく。


「マティアス様!」


アーミューが叫ぶのと、アイスキャノンがマティアスの背を射るのはほぼ同時だった。
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