皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?
「くっ……!」
「冷たき地獄」
ステインの足元から広がりはじめた氷が、一瞬のうちにマティアスの体を包み込む。〝炎の霧〟で溶かそうと動かそうとした唇は、瞬く間に氷に覆われていく。
(このままではアーミューまで……!)
詠唱が叶わないのなら、せめて。
(頼む、届いてくれ)
マティアスはまだ氷に閉ざされていない心で強く念じた。
〝闇殺〟
それは相手を闇へと引きずり込み、視覚から聴覚、嗅覚までも奪い、じわじわと入り込んだ闇が細胞を破壊する魔法だ。
(なぜ、実の父と殺し合いなど……。どうしてこんなことになったのだ。ミュリエル……、もうキミをこの腕に抱くことはないのだろう)
ミュリエルと出会ったときから離れ離れになるまでの楽しい思い出が、走馬灯として蘇る。
どの場面でもどんなときでも、彼女は清らかで、とても美しかった。
(叶うのなら、生まれ変わってまた巡り会いたい。今度こそ絶対に離しはしないから――)
氷と化したマティアスの体をステインの放った氷の矢が粉々にした直後、ステインの断末魔が王の間に響き渡った。
「冷たき地獄」
ステインの足元から広がりはじめた氷が、一瞬のうちにマティアスの体を包み込む。〝炎の霧〟で溶かそうと動かそうとした唇は、瞬く間に氷に覆われていく。
(このままではアーミューまで……!)
詠唱が叶わないのなら、せめて。
(頼む、届いてくれ)
マティアスはまだ氷に閉ざされていない心で強く念じた。
〝闇殺〟
それは相手を闇へと引きずり込み、視覚から聴覚、嗅覚までも奪い、じわじわと入り込んだ闇が細胞を破壊する魔法だ。
(なぜ、実の父と殺し合いなど……。どうしてこんなことになったのだ。ミュリエル……、もうキミをこの腕に抱くことはないのだろう)
ミュリエルと出会ったときから離れ離れになるまでの楽しい思い出が、走馬灯として蘇る。
どの場面でもどんなときでも、彼女は清らかで、とても美しかった。
(叶うのなら、生まれ変わってまた巡り会いたい。今度こそ絶対に離しはしないから――)
氷と化したマティアスの体をステインの放った氷の矢が粉々にした直後、ステインの断末魔が王の間に響き渡った。