皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?
近づく心
アンリの一件があった翌日、リオネルと朝食をとったエリーヌは自室で本を広げながら物思いに耽っていた。
リオネルには今日一日、大事を取って部屋で休むように言われている。
(〝愛しい〟ってどういう意味で言ったのかしら……)
昨夜遅く帰ってきたリオネルに言われた言葉が、エリーヌの鼓動をずっと弄んでいた。真剣な眼差しを思い出すだけで胸が激しく高鳴るのだ。
「エリーヌ様! 聞いてください!」
勢いよく開いたドアからアガットが入ってきた。
「そんなに急いでどうしたの?」
「つい先日植えたばかりの種が、もう花を咲かせているのです!」
「そう」
「〝そう〟って、まだ数日しか経っていないのですよ? 花どころか小さな芽が出れば上出来ですのに」
アガットは興奮気味にエリーヌに詰め寄った。