皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?
(ついさっき届いたばかりなのに、いったいどうしたのかしら)

エリーヌはアガットから受け取った封を開いた。

【エリーヌ、その後の様子は? なにか変わったことはないか?】

書かれていたのはそれだけだった。


「リオネル、なんだって?」
「あ、いえ、特には……」


アンリが手紙を覗き込もうとしたが、エリーヌはその前に畳んだ。


「エリーヌ様、お返事をお出ししたほうがよろしいかもしれません。きっとご心配なのでしょう」
「そうね、わかったわ」


アガットの提案に頷き、アンリに向き合う。


「アンリ様、今日のところはお引き取りくださいませ」


これほど心配しているリオネルの命に背くわけにはいかない。
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