皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?
「……わかったよ。リオネルのやつ、今度会ったらただじゃおかない」
「アンリ様、物騒な発言はおやめください。それから、あんなことがあったあとですから、今日は不用心にあまり出歩かれないほうがよろしいかと思います」


アンリはそれにはなにも答えず、不満そうに背を向ける。


「じゃ、明日また来るから。一緒にお茶を飲もう。約束だからね?」
「はい、わかりました」


肩越しに駄々を捏ねたように言うアンリに頷き、エリーヌはテーブルについて早速筆を取った。

【陛下、どうかあまりお気遣いなく。私のほうはなにもございません。でもうれしかったです。ご公務、頑張ってください】

そうしたため、リオネルが送ってよこした封筒に入れる。
こうすると差出人のもとへ風魔法が運んでくれるのだ。ランシヨンにいたときに作ったポプリも忍ばせ、封をする。


「よろしくね」


エリーヌが窓辺で手のひらに乗せると、封書は風に乗ってリオネルの元へ向かった。
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