皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?
「エリーヌ様、見てください! 花たちがエリーヌ様のほうを向いていますよ!」


アガットが興奮気味に声をあげる。


「まさか。たまたまでしょう?」


そんなはずはないとわかっているが、彼女の言うように風に吹かれて四方八方を向いていた花たちはこぞってエリーヌを見ているようだった。


「花たちにとってエリーヌ様は太陽なんですね。すごいです」
「私が太陽だなんて恐れ多いわ。摘み取ってしまうのはかわいそうだけど、今度一緒にサシェを作りましょうか」
「ええ! ぜひ!」


無邪気にはしゃぐアガットと花壇の周りをゆっくり歩いていると、すぐ後ろで馬の蹄の音がした。
揃って振り返った先にいたオスカーが、馬を止めて降り立つ。


「妃殿下ではありませんか」


ほかに誰もいないのを確認するかのように、視線がさっと横滑りした。
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