皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?
「大公殿下、こんにちは」


ドレスを摘まみ、膝を軽く折り曲げる。


「体調はいかがですか? 容態を心配しておりました」
「ご心配をおかけして申し訳ありません。もう大丈夫です」
「それはよかったです」


ここは宮殿の敷地内でも一番奥まったところにあり、用がなければ訪れない場所。オスカーがどんな用事で来たのだろうと考えていると……。


「妃殿下が撒いた種が素晴らしい花を咲かせていると噂を聞きましてね。ぜひ一度見ておこうと来た次第です」


疑問を見透かしたようにオスカーが答える。


「そうだったのですね。足をお運びくださりありがとうございます」
「噂に違わず、本当に美しい光景だ」


オスカーは花壇を見渡して笑顔を浮かべた。

(なんとなく身構えてしまうけれど、悪い人ではないのかもしれないわ)
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