皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?
来て間もなくの頃、花を贈ってきたのも、きっと皇妃に対する気遣いのひとつだったに違いない。エリーヌは、むしろ敬遠したのを申し訳なく思った。
「まるであの頃のようだな」
「……あの頃?」
この花壇はリオネルの母親が生前、手入れをしていたと聞く。その当時のことを言っているのだろうか。
遠い目をしたオスカーにエリーヌが聞き返すと、彼はその眼差しのまま見つめ返してきた。
それはどことなく切実なものだったが、不思議と嫌な感じがしない。
オスカーから贈り物をされたときには困惑するいっぽうだったのに、なぜだろうか。
「妃殿下――」
オスカーが口を開いたそのとき、
「エリーヌ!」
遠くからエリーヌを呼ぶ声が響く。振り返るとアンリが翡翠宮の方角から走ってくるのが見えた。その後ろから彼の侍従が追いかける。
笑顔で手を振っていたアンリは、オスカーが一緒にいるのに気づき、心なしか顔をしかめる。
「まるであの頃のようだな」
「……あの頃?」
この花壇はリオネルの母親が生前、手入れをしていたと聞く。その当時のことを言っているのだろうか。
遠い目をしたオスカーにエリーヌが聞き返すと、彼はその眼差しのまま見つめ返してきた。
それはどことなく切実なものだったが、不思議と嫌な感じがしない。
オスカーから贈り物をされたときには困惑するいっぽうだったのに、なぜだろうか。
「妃殿下――」
オスカーが口を開いたそのとき、
「エリーヌ!」
遠くからエリーヌを呼ぶ声が響く。振り返るとアンリが翡翠宮の方角から走ってくるのが見えた。その後ろから彼の侍従が追いかける。
笑顔で手を振っていたアンリは、オスカーが一緒にいるのに気づき、心なしか顔をしかめる。