皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?
向かって左側にあるなだらかな階段をリズムよく上がり、アンリが一番奥の部屋のドアまで到達すると、後ろを歩いていた侍従が足早にエリーヌを追い越してドアを開ける。
「どうぞ」
手のひらを上に向け、エリーヌたちを中に促した。
楕円形の宝石のような装飾、カルトゥーシュをモチーフにしたキャビネットや椅子など、瑠璃宮同様に意匠を凝らした調度品が並ぶ。中でもとりわけ目を惹くのは、深みがかった赤い布製のロングソファである。色もさることながら、ひじ掛けに掘られた細かな渦巻き模様が美しい。
「エリーヌはここ。はい、座って」
アンリはそのソファに座り、すぐ脇のシートを叩いてエリーヌを呼んだ。
心許ない様子だったアガットは、お茶を淹れにきた翡翠宮就きの侍女の手伝いをいそいそとはじめた。年代も同じくらいのため、厳かな中にも楽しそうだ。
彼女たちが淹れてくれた紅茶がサイドテーブルに置かれる。
「エリーヌとふたりにしてくれる?」
「えっ、ですが、それはちょっと……」
「どうぞ」
手のひらを上に向け、エリーヌたちを中に促した。
楕円形の宝石のような装飾、カルトゥーシュをモチーフにしたキャビネットや椅子など、瑠璃宮同様に意匠を凝らした調度品が並ぶ。中でもとりわけ目を惹くのは、深みがかった赤い布製のロングソファである。色もさることながら、ひじ掛けに掘られた細かな渦巻き模様が美しい。
「エリーヌはここ。はい、座って」
アンリはそのソファに座り、すぐ脇のシートを叩いてエリーヌを呼んだ。
心許ない様子だったアガットは、お茶を淹れにきた翡翠宮就きの侍女の手伝いをいそいそとはじめた。年代も同じくらいのため、厳かな中にも楽しそうだ。
彼女たちが淹れてくれた紅茶がサイドテーブルに置かれる。
「エリーヌとふたりにしてくれる?」
「えっ、ですが、それはちょっと……」