皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?
宥めるように呼びかけながら俯いた彼の顔を覗き込んだそのとき――。
「どうしてミュリエルは……」
「……え?」
耳にするはずのない名前がアンリの口から小さく漏れた。
一瞬、ここがどこだかわからなくなる。夢の中に一気に引き込まれたような感覚だった。
(……今、なんて言ったの? ミュリエルって……そう言ったの?)
ドクンと大きな音を立てて鼓動が弾む。
どうしてアンリの口からその名前が出てくるのか。
「アンリ様、今……なんとおっしゃいましたか?」
食い入るように彼を見つめ、震える声で問いかける。ただの聞き間違いなのかどうなのか。
下を向いていたアンリはゆっくり顔を上げ、エリーヌを見た。疑惑と困惑が入り混じった目をしている。
でもそれはエリーヌも同じ。夢に出てきた名前を、なぜアンリが口走るのか。
「アガット、少しだけ席を外してもらってもいい?」
「どうしてミュリエルは……」
「……え?」
耳にするはずのない名前がアンリの口から小さく漏れた。
一瞬、ここがどこだかわからなくなる。夢の中に一気に引き込まれたような感覚だった。
(……今、なんて言ったの? ミュリエルって……そう言ったの?)
ドクンと大きな音を立てて鼓動が弾む。
どうしてアンリの口からその名前が出てくるのか。
「アンリ様、今……なんとおっしゃいましたか?」
食い入るように彼を見つめ、震える声で問いかける。ただの聞き間違いなのかどうなのか。
下を向いていたアンリはゆっくり顔を上げ、エリーヌを見た。疑惑と困惑が入り混じった目をしている。
でもそれはエリーヌも同じ。夢に出てきた名前を、なぜアンリが口走るのか。
「アガット、少しだけ席を外してもらってもいい?」