皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?
混乱しながらも、僅かに残る冷静な部分で指示をする。夢の世界の話を聞かせて、皇都に来た疲れがたまっているのだとアガットを心配させたくない。
「……は、はい。では、なにかありましたら、すぐにお呼びください」
エリーヌのただならぬ様子を感じ取ったのか、迷いつつもアガットは従った。
彼女が退室するのを見届けてから、アンリが戸惑いながら口を開く。
「〝ミュリエル〟と言った」
胸を矢で射貫かれたよう。聞き間違いではなかった。
「……お知り合いに、そのようなお名前の方が?」
アンリが首を横に振る。
「ではアンリ様がどうしてその名前を? 私の夢の中に出てくる人なのに」
知り合いの中にいないのに、なぜ口から出てくるのか。混乱して早口になる。
普段ゆっくり話すエリーヌの困惑ぶりは尋常ではない。
「……は、はい。では、なにかありましたら、すぐにお呼びください」
エリーヌのただならぬ様子を感じ取ったのか、迷いつつもアガットは従った。
彼女が退室するのを見届けてから、アンリが戸惑いながら口を開く。
「〝ミュリエル〟と言った」
胸を矢で射貫かれたよう。聞き間違いではなかった。
「……お知り合いに、そのようなお名前の方が?」
アンリが首を横に振る。
「ではアンリ様がどうしてその名前を? 私の夢の中に出てくる人なのに」
知り合いの中にいないのに、なぜ口から出てくるのか。混乱して早口になる。
普段ゆっくり話すエリーヌの困惑ぶりは尋常ではない。