皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?
「だけど、やっと再会できたのに、ほかの男と結婚だなんて……。七歳の年の差さえなければ、今、皇帝の座に就いていたのは僕だったはずなのに。そうすればエリーヌを妻として迎え入れられたはずなのに……!」
アンリが肩を震わせ声を絞り出すが、エリーヌはどうしたらいいのかわからない。
今すぐその手を取り、強く握りしめたい想いに駆られたのは事実。愛しい気持ちが込み上げたのも否定できない。でも、そうはできなかった。
長い時を経て夫と再会できたのはミュリエルにとって喜ばしいことなのかもしれないが、エリーヌは完全に彼女ではないからなのか。それともリオネルの妻という理性が働くからなのか。
複雑に絡み合った感情と思考は、まとまりようもなかった。
「僕が成人して皇帝になったら、リオネルと離縁して僕と再婚しよう」
「えっ?」
思いがけない提案にエリーヌは声が裏返った。
「五年後、リオネルは皇帝の座を退いて、僕が皇帝になるのは聞いているよね?」
「……はい」
「だからそのときに、エリーヌは僕の妻になればいい。ううん、なるべきだよ。だって僕たちは――」
「そんなことはできません」
アンリが肩を震わせ声を絞り出すが、エリーヌはどうしたらいいのかわからない。
今すぐその手を取り、強く握りしめたい想いに駆られたのは事実。愛しい気持ちが込み上げたのも否定できない。でも、そうはできなかった。
長い時を経て夫と再会できたのはミュリエルにとって喜ばしいことなのかもしれないが、エリーヌは完全に彼女ではないからなのか。それともリオネルの妻という理性が働くからなのか。
複雑に絡み合った感情と思考は、まとまりようもなかった。
「僕が成人して皇帝になったら、リオネルと離縁して僕と再婚しよう」
「えっ?」
思いがけない提案にエリーヌは声が裏返った。
「五年後、リオネルは皇帝の座を退いて、僕が皇帝になるのは聞いているよね?」
「……はい」
「だからそのときに、エリーヌは僕の妻になればいい。ううん、なるべきだよ。だって僕たちは――」
「そんなことはできません」