皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?
なぜだかわからないが肌が総毛立ち、寒さを覚えて体を掻き抱く。どこだかわからないが、エリーヌのなにかが、勝手に不吉な予兆を感じ取った。


「リオネルがノーマンドの転生者だとしても?」
「……え?」


聞き捨てならない言葉がアンリの口から飛び出す。ノーマンドは、ミュリエルとリオネルの仲を引き裂いた人物だ。


「それでもリオネルを好きだと言える?」


どことなくきつい口調がエリーヌの胸を突く。

(ノーマンドが陛下に転生……? そんなまさか)

そうであるはずはない。


「陛下がノーマンドの生まれ変わりだなんて。冗談はお止めください」


エリーヌは笑って返したが、アンリは表情を崩さない。


「マティアスとミュリエルはここに転生しているのに、深く関わりのあったノーマンドがいないほうが不自然だよ」
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