皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?
(私がミュリエルの転生者だから、アンリ様の怪我も治せたの? それなら、この傷も癒せる……?)
強く願えば、アンリの怪我を治したときのように、眠っている魔力が目覚めるのだろうか。
いわば賭けだった。
アンリはマティアスの生まれ変わりだとしても、自分とリオネルは、ミュリエルとノーマンドの生まれ変わりであってほしくない。
エリーヌはまだ完全に信じきれず――いや、信じたくなかった。
だから今、魔力など発動しないほうがいい。
現世でミュリエルに会いたいと願うアンリの想いが、透明の魔石を持つエリーヌに向けられ、夢に投影されただけであってほしい。
リオネルの傷に手をそっと添え、祈りを込める。
「聖なる癒し」
あのときのように小さく囁き、全身の神経を手に注いだ。
エリーヌがなにをしようとしているのか気づいたのだろう。リオネルは黙ってその様子を見ていた。
傷は治したいが、魔力は発動しないほうがいい。
相反する気持ちに心が乱される。
それでもなお、真実を確かめたい想いもあった。
強く願えば、アンリの怪我を治したときのように、眠っている魔力が目覚めるのだろうか。
いわば賭けだった。
アンリはマティアスの生まれ変わりだとしても、自分とリオネルは、ミュリエルとノーマンドの生まれ変わりであってほしくない。
エリーヌはまだ完全に信じきれず――いや、信じたくなかった。
だから今、魔力など発動しないほうがいい。
現世でミュリエルに会いたいと願うアンリの想いが、透明の魔石を持つエリーヌに向けられ、夢に投影されただけであってほしい。
リオネルの傷に手をそっと添え、祈りを込める。
「聖なる癒し」
あのときのように小さく囁き、全身の神経を手に注いだ。
エリーヌがなにをしようとしているのか気づいたのだろう。リオネルは黙ってその様子を見ていた。
傷は治したいが、魔力は発動しないほうがいい。
相反する気持ちに心が乱される。
それでもなお、真実を確かめたい想いもあった。