皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?
ひとり掛け用の椅子に座り本を読んでいたエリーヌに、アガットが封書を差し出す。
手にしていた本を閉じて膝の上に置き、エリーヌはそれを受け取った。
「翡翠宮の侍女から聞いたのですが、このところアンリ様は宮殿の外によくお出になるそうです」
「アンリ様が外へ?」
「はい。誰も同行させず、こっそり出て行かれてしまうそうで、大変困っておいででした。これはもしもよろしければなのですが、エリーヌ様から軽く苦言を呈していただけると大変ありがたいと侍女が言っておりました」
アンリが度々エリーヌのもとを訪れ、仲良くしているのを翡翠宮で仕える人間も知っているからだろう。エリーヌの言葉ならアンリも聞き入れるのではないかという期待だ。
「わかったわ。機会があったらそうしてみます」
「ありがとうございます」
アンリを避け、あれきり会っていないため、それがいつになるかはわからないが。
エリーヌは気を取りなおしてダリルからの文を開封した。
【エリーヌ殿、近頃お姿が見えませんが、いかがお過ごしですか? そろそろ本も読み終えている頃では? おいしいクッキーもありますから、ぜひいらしてください】
手にしていた本を閉じて膝の上に置き、エリーヌはそれを受け取った。
「翡翠宮の侍女から聞いたのですが、このところアンリ様は宮殿の外によくお出になるそうです」
「アンリ様が外へ?」
「はい。誰も同行させず、こっそり出て行かれてしまうそうで、大変困っておいででした。これはもしもよろしければなのですが、エリーヌ様から軽く苦言を呈していただけると大変ありがたいと侍女が言っておりました」
アンリが度々エリーヌのもとを訪れ、仲良くしているのを翡翠宮で仕える人間も知っているからだろう。エリーヌの言葉ならアンリも聞き入れるのではないかという期待だ。
「わかったわ。機会があったらそうしてみます」
「ありがとうございます」
アンリを避け、あれきり会っていないため、それがいつになるかはわからないが。
エリーヌは気を取りなおしてダリルからの文を開封した。
【エリーヌ殿、近頃お姿が見えませんが、いかがお過ごしですか? そろそろ本も読み終えている頃では? おいしいクッキーもありますから、ぜひいらしてください】