皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?
自分の似顔絵なのか、イラスト入りの手紙だった。上手とは言えない腕前だが、それがまた愛嬌があってかわいらしい。

思わず笑みを零すと、


「エリーヌ様の楽しそうなお顔、久しぶりに見た気がします」


アガットはうれしそうに手を胸の前で組んだ。


「心配をかけてごめんね」
「いえいえ、エリーヌ様を心配するのも私の大事な仕事のひとつですから」
「ありがとう」


この一週間、部屋から出るのは食事のときだけ。それまで気安く受け入れていたアンリを遠ざけ、気難しい顔で考え事ばかりしていたため、アガットには気を使わせていただろう。申し訳なく思うのと同時に、彼女の優しい言葉が身に染みた。

ダリルの言う通り、借りてきた本はすべて読み終えてしまっているため、新たに借りたいと思っているのも事実。いつまでも部屋で物思いに耽っていても仕方がない。


「明日あたりダリル様のところに行ってみようかしら」
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