皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?
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「最近、よく夢を見る」
「夢、そうですか。私もまぁ見るほうではありますが。わざわざ私に話すのですから、なにか気がかりなことがおありのようですな」


ダリルの察しの良さにリオネルは目を瞠った。


「それはどのような夢で?」
「その夢の中で私はべつの人格で、どこかの国の王子のようだ」


不思議なことにそれはまるで物語のように続きがあり、時折前後するものの、ほぼ時系列で見させられている。

夢とは自分の欲望や願望が投影するもの。〝見させられている〟と感じるのは、リオネルの意思とは別次元にあるような気がしてならないせいだ。


「ほう。それで?」
「妻がいるのだが、鉱山の利権を巡って強引に引き離されたらしい。その王子はマティアスといって――」
「マティアス!?」


ダリルがガタンと椅子を鳴らす。目を見開いたその顔は驚きに満ちていた。
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