皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?
ではなぜあのような夢を見たのか。転生を否定すれば、説明がなにひとつつかなくなる。現にダリルの歴史書にはふたりの名前が記録されているのだ。

会ったことがないという事実だけで、真っ向から否定するのは乱暴な気がした。


「……どうしてそこまで言いきれるのだ」


無鉄砲とも思える発言には、なにか理由があるはずだ。

ダリルはさらに表情を引きしめ、真剣な眼差しでリオネルを見た。


「私が転生者だからです」


想像の上をいく打ち明け話だった。


「ダリル自身が、転生……?」
「私の場合、物心がつく頃にはその記憶を持っていたんですがね。私にとってはごく自然なことだったので周りのみんなもてっきりそうだと思っていたら、誰ひとりそんな人間はいない。そのうち『ダリルは妄想癖がひどい』などと言われたものですから、胸の内にしまう以外になくなりましたよ」


リオネルは口を半開きにして固まった。
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