皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?
【陛下、ご心配のし過ぎです。私は大丈夫ですので、どうかご公務にお戻りください。先日、陛下に用意していただいた種が花を咲かせました。お時間が許すようでしたら、今度ご一緒に見に行きませんか?】

〝もちろん〟と心の中で答えながら、つい頬が緩む。


「陛下、お幸せそうでなによりですな。お顔が……ぐふふっ」
「からかうな、ダリル」


肩を揺らして含み笑いをする彼を軽く睨むが、エリーヌからの返事を手にした喜びで締まりがない。


「失礼する」


こうなればもう退散する以外にないだろう。
リオネルは文を畳んで胸ポケットに入れ、魔石研究所をあとにした。

向かうはアンリのもとである。そろそろ授業も終わる頃だろう。

馬にまたがり、翡翠宮を目指す。
ダリルが転生者だとは。馬を操りながら頭の中は先ほどの話でいっぱいだ。
しかも自分にも前世があり、その記憶が夢として現れていると言うのだから。混乱しないほうが無理である。
リオネルは逸る気持ちを抱え、馬を走らせた。
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