皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?
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いつの間に寝入ってしまったのか。エリーヌの眠るベッドに突っ伏していたリオネルは、ゆっくり上体を起こした。

窓の外、遠くの空が薄っすらと白みはじめている。


「エリーヌ、そろそろ目を開けてくれ」


リオネルがそっと頬に触れると、わずかに瞼が動いたように見えた。


「……エリーヌ?」


囁くように呼びかける。彼女の手を取り、両手で握りしめた。


「エリーヌ、そうだ。目を開けろ。頼む、開けてくれ」


美しい笑顔を見せて、優しい声を聞かせてほしい。
リオネルの声が届いたのか、エリーヌの瞼が薄く開いた。


「エリーヌ!」
「……陛下」
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