皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?
「エリーヌ殿もその記憶があるのですね」
「〝も〟ということは……」
「じつは私にもあります」
「えっ」


驚くべき告白を聞き、エリーヌは言葉を失った。

輪廻転生はエリーヌも信じているが、記憶を持って転生する人が身近にこんなにもいるとは。


「大公殿下はどのような記憶をお持ちなのですか?」


深く腰をかけていたエリーヌだったが、つい前のめりになって問いかける。


「金に目が眩んで隣国と争いをはじめ、大事な娘に先立たれた国王の記憶です」

(えっ、それってもしかして……)

心臓がドクンと脈を打った。


「……その国王か娘、どちらかのお名前はわかりますか?」
「娘の名は、ミュリエル」


オスカーはきっぱりと、だけど優しい声色で言った。
エリーヌが目を見開く。
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