皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?
「透明の魔石保持者だと事前に聞いていたので、もしやと思っていたのもあると思います。ですが、妃殿下を見た瞬間、なぜか確信したのです。ずっと会いたいと願っていた、最愛の娘だからでしょうか」


目を細めたオスカーの笑顔は慈愛に満ちていた。
ミュリエルの父であるマルコリンとは年齢も顔も全然違うのに、不思議と夢で見た彼と重なる。


「エリーヌ殿にこんなことを言うのはお門違いだとわかっていますが、マルコリンとしてずっと心残りだった言葉を言わせてください。〝本当に申し訳なかった。私が欲を出して鉱山を欲しがらなければ、ミュリエルとマティアスは引き離されたりしなかっただろう。ミュリエルが自ら命を絶つことなどなかったはずだ。どうか愚かな私を許してほしい〟」


オスカーは椅子から崩れるように落ち、フロアに手と膝を突いて土下座するようにした。


「大公殿下、どうかそのような真似はお止めください」


エリーヌは椅子から立ち上がり、慌ててオスカーの肩に手を添える。


「誰かが悪いという話ではありません。争いが頻発していましたから、あの時代の流れというものもあったでしょう」
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